研究課題
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腸内細菌叢は様々な代謝疾患と関わっており近年注目されているが、そのメカニズムについては十分に解明されていない。申請者は栄養組成を変えた食事を投与した有菌および無菌マウスの血漿網羅的リピドミクス解析を通じて、腸内細菌叢が血中脂質プロファイルを決定づけ、その程度が肥満や耐糖能異常と相関することを明らかにし、そのメカニズムの一つに小腸脂質トランスポーターの変化があることを見出した。さらに、ポリフェノールXが腸内細菌叢依存的に、腸管での脂肪酸吸収を抑制し、抗肥満作用を示す結果を得た。本研究では、腸内細菌叢による腸管栄養トランスポーターの制御機構を明らかにし、代謝異常の新たなメカニズムの解明を目指す。
高脂肪食誘導肥満マウスにおいてポリフェノールX(以下X)を投与すると肥満・耐糖能が改善した。Xは便中脂質排泄を増加し、小腸での脂質吸収トランスポーターCD36の発現を抑制した。またXは膵リパーゼの活性を阻害していた。すなわちXは脂質吸収を抑制し便中脂質排泄を促進することで肥満を改善することがわかった。これらは抗生剤使用下では消失することから、Xは腸内細菌叢依存的に抗肥満作用を示すと考えられ。腸内細菌を解析すると、Xは腸管バリア機能・代謝改善に重要な菌であるAkkermansia muciniphila(AM)が顕著に増加しており、その結果腸管バリア機能が改善していた。
本研究は、食品由来成分であるポリフェノールXが、代謝にとって重要な菌であるAkkermansia muciniphilaの増加を介して宿主の代謝を改善することを明らかにした。この作用は、近年注目されている腸内細菌を介した治療に繋がりうる重要な知見である。さらなる解析を進めることで、食品由来成分や薬品などをその薬理学的作用のみならず、腸内細菌への介入を通じて肥満や糖尿病といったメタボリックシンドロームを治療するという新たな治療戦略に繋がる可能性がある。
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iScience
巻: 24 号: 5 ページ: 102445-102445
10.1016/j.isci.2021.102445