研究課題/領域番号 |
21K20923
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0903:器官システム内科学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村川 智一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50902194)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
|
キーワード | 虚血再灌流傷害 / 心不全 / オートファジー / マイトファジー / ミトコンドリアダイナミクス |
研究開始時の研究の概要 |
心不全は未だ予後不良の疾患であり、新規治療標的も定まっていない。心不全における異常ミトコンドリア蓄積のメカニズムは解明されておらず、我々はミトコンドリア選択的分解機構であるマイトファジーに着目し、レセプター分子としてBcl2 like protein 13を同定した。本研究では、マウス心筋梗塞心不全モデルを用いて同分子の生体における役割を明らかにするとともに、同分子の分裂細胞と非分裂細胞における機能の差異を解析することによりマイトファジーの心臓における機能の全容を解明することを目的とする。また、これらの検討により創薬につながる分子標的を明らかにし、新規心不全治療への応用を目指す。
|
研究実績の概要 |
in vitroの実験においては、前年度に確立したラット新生仔単離心筋細胞(NRCM)を用いたhypoxia-reoxigenation(HR)の系についてさらに検討を行った。in vitroでのマイトファジー実験を効率よく行っていくには、現在行っている蛍光免疫染色によるマイトファジーの検出よりも、マイトファジーの誘導によるミトコンドリア分解をミトコンドリアタンパク質の減少もしくは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の減少により検出できることが望ましい。昨年検討したHRの条件において、ミトコンドリアタンパク質をWesten blottingで、mtDNAを定量PCRで評価したが、HRによる減少を検出することは出来なかった。タンパク質合成の影響を考え、クロラムフェニコールによるミトコンドリアタンパク質合成阻害下で同実験を行ったが、やはり検出は難しかった。より強い刺激が必要と考え、現在、HR条件の再検討を行っている。アミノ酸欠失培地の使用及び低酸素時間の延長により、以前より多くのマイトファジーを誘導できることが可能であった。細胞死についても評価しており、in vivoでの虚血再灌流をmimicするのに最適な条件を決定する。 in vivoの実験においては、Bcl2-L-13ノックアウトマウスラインの確立には成功したものの、Bcl2-L-13+/+マウスの産生数が少なかった。虚血・再灌流手術の手技が確立できたため、予備実験として野生型マウスを購入してノックアウトマウスと比較した。冠動脈結紮45分の後、結紮を解除し、24時間後に心エコーによる心機能評価及びTTC染色による梗塞領域の評価を行った。梗塞領域および左室短縮率において野生型マウスとノックアウトマウスの間に有意な差異を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に記載したように、Bcl2-L-13ノックアウトマウスのrederivationが上手くいかず、受精卵を再度移送するなどに時間がかかったことが進捗の遅れの主な原因である。また、上記のようにrederivationに成功した後も原因は不明であるが、実験に使用するBcl2-L-13+/+マウスの産出が少ないことも進捗の遅れにつながっている。過去には、問題なくメンデルの法則に従って産出されていたため、マウスのgeneticな問題ではないと考えられる。現在、掛け合わせ数を通常よりも多くして進捗を早める努力をしている。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように、野生型マウスとBcl2-L-13ノックアウトマウス間で虚血再灌流障害への反応における差異がある可能性が示された。まずは、littermateの野生型マウスの個体数を確保し、虚血再灌流24時間後における心エコーによる心機能評価、TTC染色による梗塞領域の評価を行い、表現型を確定させる。虚血再灌流障害への反応の差異が生じるメカニズムを探索するために、虚血再灌流24時間後の心筋サンプルを取得し、生化学的評価(Western blottingによるミトコンドリアタンパク質やミトコンドリアダイナミクスに関わるタンパク質の評価、BNP・ANPなどのmRNAレベルの評価)や組織学的評価(炎症細胞浸潤など)を行う。また、電子顕微鏡によりミトコンドリア形態の評価を行う。マイトファジーの生体での評価に関しては、マイトファジーのレポータータンパク質であるmito-QCを発現するトランスジェニックマウスとの交配を検討する。また、表現型が生じる原因を同定するために、より短時間での評価が必要になる可能性があり、同様の項目に対して時間的変化を評価する。 これらの評価から得た結果をもとに分子メカニズムを検討する。分子メカニズムの検討には、in vitroの系が不可欠であり、現在行っているHRを用いた系を確立する必要がある。 NRCM及びH9C2細胞を用いて、マイトファジーが誘導され、生化学的評価にてそれを検出可能な条件を探索する。条件が決定されれば、Bcl2-L-13に対するshRNAを発現するアデノウイルスベクターにより、Bcl2-L-13をノックダウンし、マイトファジー、ミトコンドリア形態及び細胞死に変化が生じるかを検討する。
|