上咽頭癌におけるエクソソームへのPD-L1分泌を介した抗PD-1抗体耐性機構

• 研究課題/領域番号: 21K20946
• 研究種目: 研究活動スタート支援
• 配分区分: 基金
• 審査区分: 0905:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 小林 英士 金沢大学, 医学系, 助教 (00632530)
• 研究期間 (年度): 2021-08-30 – 2023-03-31
• 研究課題ステータス: 完了 (2022年度)
• 配分額: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円); 2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円); 2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
• キーワード: 上咽頭癌 / エクソソーム / PD-L1 / PD-L-1 / Epstein Barrウイルス / PD-1/PD-L1系 / 細胞間情報伝達

研究開始時の研究の概要

癌の浸潤・転移には、エクソソームという細胞外小胞が重要な役割を果たしていることが分かってきた。これまで我々は、高転移性癌である上咽頭癌モデルにおいて、エクソソームがその高転移性に寄与することを報告している。
上咽頭癌に対する抗PD-1抗体製剤の奏効率は、期待を下回っている。他の癌種で、PD-L1含有エクソソームと耐性の関連が報告されている。
本研究はエクソソームに着目し、上咽頭癌における抗PD-1抗体製剤耐性の機序を解明し、新規バイオマーカーおよび治療標的の探索を目的とする。

研究成果の概要

既に上咽頭癌モデルにおけるエクソソームへのタンパク輸送への関与が報告されているUCH-L1およびそのファルネシル化に着目した。ファルネシル基転移酵素阻害剤である、FTI-277ならびにTipifarnibも用いた解析を行った。Tipifarnibは近年頭頸部癌領域において抗腫瘍効果が報告されている。
これらのファルネシル基転移酵素阻害剤によりエクソソームの分泌が抑制されること、ならびにPD-L1の発現を抑制する可能性があることが示された。これらの結果により、ファルネシル化がエクソソームの形成機構、特にPD-L1陽性エクソソームの形成機構に関与していることが示唆された。

研究成果の学術的意義や社会的意義

癌の浸潤・転移には、エクソソームと呼ばれる細胞外小胞が関わる細胞間情報伝達機構が重要な役割を果たしていることが分かってきた。近年抗PD-1抗体製剤が、上咽頭癌を含む頭頸部癌において承認されたが、その奏効率は期待を下回っている。他の癌種において薬剤耐性機構へのエクソソームへの関与が報告されており、上咽頭においても同様に、その薬剤耐性機構に、エクソソームが関与していることが予想される。本研究によって、上咽頭癌におけるエクソソームへのタンパク分泌機構の解明につながった。抗PD-1抗体製剤耐性の機序の解明ならびにその回避を通じた臨床応用・新規創薬につながる社会的意義のある研究である。

研究成果

• [雑誌論文] EBV genome variations enhance clinicopathological features of nasopharyngeal carcinoma in a non‐endemic region (2022)
  • 著者名/発表者名: Kondo Satoru、Okuno Yusuke、Murata Takayuki、Dochi Hirotomo、Wakisaka Naohiro、Mizokami Harue、Moriyama‐Kita Makiko、Kobayashi Eiji、Kano Makoto、Ueno Takayoshi、et al.
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: 113 号: 7 ページ: 2446-2456
  • DOI: 10.1111/cas.15381
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Estrogen induces the expression of <scp>EBV</scp> lytic protein <scp>ZEBRA</scp> , a?marker of poor prognosis in nasopharyngeal carcinoma (2022)
  • 著者名/発表者名: Dochi H、Kondo S、Murata T、Fukuyo M、Nanbo A、Wakae K、Jiang P、Hamabe T、Tanaka M、Nishiuchi T、Mizokami H、Moriyama M、Kobayashi E、Hirai N、Komori T、Ueno T、Nakanishi Y、Hatano M、Endo K、Sugimoto H、Wakisaka N、Juang H、Muramatsu M、Kaneda A、Yoshizaki T
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: 113 号: 8 ページ: 2862-2877
  • DOI: 10.1111/cas.15440
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Protein Farnesylation on Nasopharyngeal Carcinoma, Molecular Background and Its Potential as a Therapeutic Target (2022)
  • 著者名/発表者名: Kobayashi Eiji、Kondo Satoru、Dochi Hirotomo、Moriyama-Kita Makiko、Hirai Nobuyuki、Komori Takeshi、Ueno Takayoshi、Nakanishi Yosuke、Hatano Miyako、Endo Kazuhira、Sugimoto Hisashi、Wakisaka Naohiro、Yoshizaki Tomokazu
  • 雑誌名: Cancers 巻: 14 号: 12 ページ: 2826-2826
  • DOI: 10.3390/cancers14122826
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] 頭頸部癌に対する化学放射線療法症例における全身性炎症反応と サルコペニア評価の意義 (2022)
  • 著者名/発表者名: 遠藤一平、小林英士、平井信行、小森岳、中西庸介、近藤悟、吉崎智一
  • 雑誌名: 金沢大学十全医学会雑誌 巻: 131 ページ: 32-40
  • 査読あり
• [雑誌論文] EBV genome variations enhance clinicopathological features of nasopharyngeal carcinoma in a non-endemic region (2022)
  • 著者名/発表者名: Kondo, Satoru; Okuno, Yusuke; Murata, Takayuki; Dochi, Hirotomo; Wakisaka, Naohiro; Mizokami, Harue; Moriyama-Kita, Makiko; Kobayashi, Eiji; Kano, Makoto; Komori, Takeshi; Hirai, Nobuyuki; Ueno, Takayoshi; Nakanishi, Yosuke; Endo, Kazuhira; Sugimoto, Hisashi; Kimura, Hiroshi; Yoshizaki, Tomokazu
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: －
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] エクソソームの上咽頭癌転移・浸潤能への関与とLiquid Biopsyへの応用の展望 (2023)
  • 著者名/発表者名: 小林英士、上野貴雄、近藤悟、吉崎智一
  • 学会等名: 第6回CTC臨床応用研究会
• [学会発表] Clinical outcomes of Nivolumab its prognostic factors related to tumor immunity in head and neck malignancies (2022)
  • 著者名/発表者名: Eiji Kobayashi, Satoru Kondo, Hisashi Sugimoto, Tomokazu Yoshizaki
  • 学会等名: 18th Japan-Korea Joint Meeting of Otorhinolaryngology - Head and Neck Surgery
  • 国際学会
• [学会発表] 当科におけるNivolumabの使用成績および腫瘍免疫に関連した予後因子の検討 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林英士、吉崎智一
  • 学会等名: 第1回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
• [学会発表] C-Terminal Farnesylation of UCH-L1 Plays a Role in Transport of Epstain-Barr Virus Primary Oncoprotein LMP1 to Exosomes (2022)
  • 著者名/発表者名: Eiji Kobayashi, Satoru Kondo, Christopher B Whitehurst, Tomokazu Yoshizaki, Joseph S Pagano, Julia Shakelford
  • 学会等名: 19th International Symposium on Epstein-Barr Virus and associated disease
  • 国際学会
• [学会発表] 当科における甲状腺分化癌の術後再発期間についての検討 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林英士、近藤悟、吉崎智一
  • 学会等名: 第80回日本癌学会
• [学会発表] 外側側頭骨切除術施行時の前方視野確保おける、万能開口器の有用性 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林 英士、杉本 寿史、吉崎 智一
  • 学会等名: 第22回 耳鼻咽喉科手術支援システム・ナビ研究会
• [図書] 分子標的薬が適応となる耳鼻咽喉科疾患 (2022)
  • 著者名/発表者名: 小林英士、吉崎智一
  • 総ページ数: 4
  • 出版者: 東京医学社
  • ISBN: 9784885635502