研究課題
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神経障害性疼痛の一つである、複合性局所疼痛症候群(CRPS)は難治性であり、生活の質の低下を招き、その治療は整形外科医にとって重要な取り組むべき問題である。また、CRPSでは難治性疼痛以外にも骨萎縮や局所の骨量減少を呈することが報告されており、そのメカニズムに関しては未だ不明な点が多い。近年、CRPSの痛覚過敏や骨量減少にTRPV1が関与することが報告されている。本研究では、TRPV1 ノックアウトマウスを用いてCRPS類似モデルを作成し、その疼痛を引き起こす病態や骨代謝動態を解明することを目標とし、CRPSの効果的治療薬の開発に繋げることを目的とする。
令和4年度は、野生型マウス、TRPV1ノックアウトマウスおよびTRPV4ノックアウトマウスを用いて、右側坐骨神経部分結紮(pSNL)を行い、CRPSモデルを作成した。対照群は神経の露出のみを行う偽手術群(Sham)を設けた。処置前、処置後1週、2週、3週および4週に体重測定および痛覚閾値の評価(機械刺激および熱刺激)を行なった。処置後4週後に屠殺し、両側の脛骨を摘出した。pSNLを行なった全てのマウスに処置後1週から4週まで機械刺激および熱刺激に対する痛覚閾値の有意な低下を認めた。今後摘出した脛骨を用いて、骨形態計測を行う予定である。さらに、野生型マウス、TRPV1ノックアウトマウスおよびTRPV4ノックアウトマウスを用いて、pSNLを行い、CRPSモデルを作成した。ビデオトラッキングシステムを用いて、オープンフィールド内におけるマウスの活動量の評価を行った。Sham群及びpSNL群の間に明らかな有意差を認めなかった。また野生型マウス、TRPV1ノックアウトマウスおよびTRPV4ノックアウトマウスの群間においても、明らかな有意差を認めなかった。
3: やや遅れている
TRPV1-/-ノックアウトマウスの繁殖状況が悪く、実験に使用するマウスの確保に時間を要した。現在は、繁殖状況は改善しており、予定通り実験を行える状況となっている。
令和5年度は、CRPS類似モデルを用いて骨形態計測、骨髄細胞培養実験およびWTに対するTRPV1拮抗薬ならびにTRPV4拮抗薬を用いた介入実験を行う予定としている。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会および国際学会に発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件)
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