研究課題
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近年、糖尿病の病態である高血糖が腸管上皮を始めとした様々な上皮組織のバリア機能に影響を及ぼすことが報告がされています。申請者は、高血糖状態の歯肉上皮細胞における細胞間接着分子の発現低下が誘導され、歯肉上皮のバリア機能が低下することを明らかにしましたが、その作用機序の詳細は未だ明らかとなっていません。そこで本研究は、種々のストレスに対する細胞応答として報告されている統合的ストレス応答 (integrated stress response : ISR) に着目し、ISRが高血糖状態における歯肉上皮の細胞間接着分子の発現低下の作用機序として、関与するか否かを検討します。
高血糖状態の歯肉上皮細胞における細胞間接着分子の発現低下に伴ってROSの産生亢進を認めた。抗酸化剤であるNACは、同細胞間接着分子の発現低下に対する有意な阻害効果を認めた。さらに、高血糖状態の歯肉上皮細胞において、統合ストレス応答に属する転写因子ATF4の発現低下とERK1/2リン酸化の亢進およびNACによるERK1/2リン酸化の阻害効果が認められた。以上より、高血糖状態は歯肉上皮細胞において、ERK1/2が活性化することにより、細胞間接着分子の発現低下を引き起こし、そのメカニズムとして、酸化ストレスや統合ストレス応答の関与が示唆された。
本研究成果は、糖尿病の病態である高血糖が歯周病を悪化させる一因を歯肉上皮細胞の細胞間接着分子に着目し、そのメカニズムを解析したものである。高血糖状態の歯肉上皮細胞において活性酸素の産生亢進やAFT4の発現低下を認め、酸化ストレスや統合ストレス応答と関連していることが示唆された。これらの研究成果は、糖尿病患者の歯周病悪化を予防する抗酸化剤などの新薬開発につながると考える。
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Sci. Rep.
巻: 11(1) 号: 1 ページ: 18398-18398
10.1038/s41598-021-97868-2