研究課題/領域番号 |
21K21143
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
平田 美佳 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (40285325)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | End-of-Life Care / 小児緩和ケア / 遺族 / 脆弱性 / 倫理的配慮 / 質的研究 / 利益と負担 / 小児がん看護 / 母親 / 生きる力 / 死別 / M-GTA / 理論モデル / 小児がん / 希望 / 終末期 / 子どもと家族中心ケア / HOPE |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は20数年の小児がん看護実践経験を有する研究者が、がんの子どもと死別した親への面接により、ケアをしながら深い語りを得て、終末期にあるがんの子どもと親の希望や生きる原動力(HOPE)を支える“子どもと家族中心ケアモデル”を構築し、臨床活用へ発展させることを目的とする。 具体的には、①質的研究方法論である修正版Grounded Theory Approachの手法を用い、親子のHOPEは何であるかを当事者の視点から探求すること、②分析結果から子どもと家族中心ケアの哲学に基づいたHOPEの生成プロセスに関する領域密着型理論を開発すること、③その理論を基盤としたケアモデルを構築することに取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究の問いは「こどものいのちが失われるかもしれないという状況で、こどもと家族は何に希望を持ち、何を支えに生きるのか、生きる強さは何によるものなのか」であり、本研究はこどもを亡くす(亡くした)母親が「生きる」ということの内的メカニズムを探求する研究となり、その成果は昨年度報告した。 本研究は、脆弱性の高い遺族を対象とした質的研究であり、先行研究の「遺族研究において将来の研究対象者への倫理的配慮を考えるために、対象者の研究参加の利益と負担の評価を研究デザインに含めること(Weaver, et al.,2019)」という提案に基づき、研究のデザイン設計に、倫理的配慮の評価と考察をも含めることとした。その結果、遺族が研究参加による負担としては、面接前の不安やあふれ出るわが子への思い、研究説明書の言葉への敏感な反応があり、面接前からケアとしての配慮を必要とすることが明らかとなった。一方、対象者全員が研究参加はよい経験だったと評価し、【心のうちにしまっていた記憶の蓋をあけるきっかけ】【改めて、死別したこどもに思いをはせる時間】【語ることによる生きる力の高まり】【誰かに、何かに貢献できる喜び】などの研究参加の利益が明らかとなった。この研究結果と質的研究結果を統合して分析し、母親がこどもを語り、苦しみを語り、亡くなった実在しない子どもの存在を感じることにより、死別後もこどもに生かされている母親の生きるありようが明らかとなり、研究参加自体が、母親の生きる力の軌跡をなしていることが明らかとなった。本研究により、遺族研究は適切な倫理的配慮により対象に多くの利益をもたらすケアとしての意味、希望(hope)をももたらすことが示された。また、研究者に求められる資質のひとつとして、臨床的センシティビティがあることが示され、遺族研究における倫理的配慮のあり方についての示唆も得られることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1.本研究の成果である「子どものがんの発病から死を迎えるまで子どもの病と闘った母親の生きる力の軌跡」の一部「母親の”希望と時間の意味づけの変容のプロセス”」を日本緩和医療学会(2023年7月)にて口演発表を行い、第28回日本緩和医療学会学術集会 優秀演題口演発表賞を受賞した。
2.本研究のデザインに、脆弱性の高い対象が質的研究に参加する利益と負担に関する倫理的考察を行うことを含め、その考察論文を日本看護科学学会誌に投稿し採択された。 3.本研究で生成された理論の臨床活用という最終目的をめざし、理論を基盤としたケアモデル案の作成は達成したため、実装に向けての方略を今後検討していく予定である。 4.本研究の論文投稿および書籍の出版も予定している。 教育業務・大学運営業務やその他の研究へのエフォートが増加し、今年度は本研究活動へのエフォートが低くなり、研究の進捗が遅れているが、次年度で成果の公表と実践への活用の達成をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究の成果である「子どものがんの発病から死を迎えるまで子どもの病と闘った母親の生きる力の軌跡」を、海外学術誌に投稿し、知見を広めていく予定である。 そして、本研究で生成された理論の臨床活用という最終目的をめざし、理論を基盤に構築したケアモデルを小児がん関連の国際学会看護シンポジウム(SIOP Asia 6月23日開催)で発表するとともに、その実装に向けての方略を探っていく予定である。
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