研究課題/領域番号 |
21K21182
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0908:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
園田 修平 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (90906257)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | DNAバーコーディング / 毒キノコ / 食中毒 / taxonomic profiling / ITS / tef1a |
研究開始時の研究の概要 |
日本では、毒キノコによるものと推定される食中毒事案が毎年40件前後発生しているが、うち約4割の事案で原因キノコ種が鑑別されていない。その背景には、形態的特徴に基づく鑑別法を食中毒検体に適用することの困難さ、特異的成分の理化学的検出に基づく鑑別の非効率性があると考えられる。本研究では、これら従来的鑑別法に代えて、食中毒検体に適用可能、かつ、キノコ種を問わず一律に適用し得る、DNAバーコーディング法による鑑別法を検討する。既知の毒キノコ及びその近縁種について、DNA塩基配列情報を蓄積し、種内及び種間変異を解析することで、実際の事案において直ちに適用可能な鑑別法の整備を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、有毒キノコによる食中毒事案を想定し、試料から得られたDNA塩基配列によって中毒原因のキノコを推定する手法(DNAバーコーディング法)を検討するものである。 令和4年度は、調理及び消化の影響を受けた試料に対する適用を検討した。先行研究において、調理時の高温及び消化時の低pHに曝された嘔吐物又は胃内容物は、そのDNAが断片化し、解析対象領域のPCRが困難になることが報告されている。そこで、本研究では、従来解析対象であったinternal transcribed spacer 1 (ITS1)領域より「短い」領域を新たな解析対象とすることで、DNA分解試料に対するPCR及び配列解析の成功率を向上させることを目指した。 まず、新たな解析対象領域として、(1)真正担子菌綱に普遍的に存在し、 (2)種間変異に富み、(3)ITS1領域(200-300 bp)より短い遺伝子領域を検索したところ、translation elongation factor 1-alpha (tef1a)遺伝子のイントロンの一つ(約110 bp)が見出された。 当該イントロンを標的としたPCRの可否を検討すべく、エリンギ・マイタケ・アミタケ・アラゲキクラゲ・チチタケ試料より抽出したDNAについてPCRを試みたところ、いずれも増幅が確認された。これらPCR産物の塩基配列を決定し、公共塩基配列データベース(Genbank)を対象として類似配列を検索したところ、対応する種に由来する配列がヒットした。 さらに、DNA分解試料における当該イントロン及びITS1のPCR成否を比較すべく、エリンギを炒めた又は茹でた試料及びこれらを最大5時間模擬胃液で消化した試料についてPCRを試みたところ、5時間消化時点でITS1の増幅が確認されなくなった一方、当該イントロンは依然として増幅が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新たな遺伝子領域を解析対象として見出したことで、DNA分解が進行した喫食残品及び嘔吐物への適用可能性を示すことができたものの、研究成果としてまとめる上では更なる検討の余地が残されているため。
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今後の研究の推進方策 |
新たに見出した遺伝子領域について、PCR条件の最適化を更に試みる。その上で、当該領域の解析対象としての有用性を示すべく、試料として用いるキノコの種類及び調理・消化条件を追加して、PCR及び配列解析の可否を検証する。
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