研究課題
研究活動スタート支援
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia; FTD)は特徴的な人格、行動の障害、言語障害を呈するため、社会的に問題となる症例が存在する。特に高齢者の独居率が高まり、独居が可能な初期FTD患者の自宅がゴミ屋敷となってしまうという問題も顕在化するようになった。本研究では(1) FTDの重症度評価尺度の日本語版を作成し、信頼性、妥当性、反応性を検証し、(2) FTDにおけるため込みの実情とその要因を明らかにし、(3) FTDにおけるため込みへの介入法を検討することを目的とする。本研究の成果から、社会問題となっているごみ屋敷の対応策に関する重要な知見が得られることが期待される。
研究1:日本語版FTLD-CDRの作成:2021年度に日本語版FTLD-CDRを作成した。研究2:日本語版FTLD-CDRの信頼性、妥当性、反応性の検証:2021年度にアルツハイマー型認知症(AD)、行動異常型前頭側頭型認知症、意味性認知症、進行性非流暢性失語と診断された患者50例リクルートし、初回の評価を実施した。2022年度に半年後の評価を44例、一年後の評価を40例に対して行った。初回評価にて、良好な信頼性、妥当性が確認された。初回・半年後・一年後評価を用いた反応性の検証では、FTLD-CDRの合計点で有意差が確認された。研究1・2の内容を英語論文にまとめた(Taomoto D, et al. Utility of the Japanese version of the Clinical Dementia Rating; plus National Alzheimer's Coordinating Centre Behaviour and Language Domains for sporadic cases of frontotemporal dementia in Japan. Psychogeriatrics. 2024 Mar;24(2):281-294.)。研究3:FTDにおけるため込みの実態とその要因の検証:2021・2022年度にためこみ症状の写真評価尺度であるClutter Image Rating(CIR)を実施した。CIRは前頭側頭型認知症(FTD)とADの2群間で有意差はなかった。この理由として本研究は介護者がいる患者、もしくは入院している患者を対象としたことが考えられた。CIRと認知機能、精神症状、CDR、FTLD-CDRの相関解析を行ったところ、FTDではCIRと食行動異常、ADでは易刺激性と有意な正の相関があった。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Psychogeriatrics
巻: 24 号: 2 ページ: 281-294
10.1111/psyg.13072
精神科治療学
巻: 37 ページ: 205-208
老年精神医学雑誌
巻: 33 ページ: 811-816