研究課題/領域番号 |
21K21285
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
1001:情報科学、情報工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
庵 智幸 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助教 (00908410)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 非線形システム / Hamilton-Jacobi方程式 / 数式処理 / 偏微分方程式 / D加群 / 状態推定 / 非線形制御 / 代数的手法 / 偏微分作用素 |
研究開始時の研究の概要 |
実社会に存在する多くのシステムは複雑な非線形性を持つ.従来よりも高精度・高効率な制御を実現するためには,この非線形性を活かした推定・制御器の実現が必要不可欠である.しかしながら,非線形性を考慮した推定・制御器の設計には偏微分方程式の求解という困難が付きまとう. 本研究では,偏微分方程式の本質的な部分を抜き出した数学的概念であるD加群を用いて推定・制御器設計理論の構築を行う.D加群に対する数式処理という新たな視点・方法論を導入し,大域的な非線形性を考慮しつつも問題設定の細かい差異に左右されない見通しの良い設計理論の構築を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,偏微分作用素の数式処理という新たな視点・方法論の導入による非線形制御・推定器設計理論の構築である.偏微分方程式からその本質的な情報を抜き出した概念であるD加群と呼ばれる概念を用いることで,理論的には問題の本質のみに着目した議論の展開が可能となり,また本質を変化させない範囲で利用できる自由度を網羅的に活用することで,アルゴリズム設計をより系統的に行える可能性がある.本年度の研究計画では,昨年度に定式化した推定・制御器設計問題を解くため,数式処理を用いた具体的なアルゴリズムの提案・設計を行う予定であった. これに対し本年度では,昨年度から引き続き,非線形システム制御理論において重要な偏微分方程式であるHamilton-Jacobi方程式(HJ方程式)の解法に関する検討を進めた.具体的には,HJ方程式が有限次元ベクトル決定問題に帰着できるという昨年度の成果を元に,その決定問題が高々有限個の代数方程式で表現できることを証明した.これにより,もしその方程式が解を持てば,高々有限個の代数方程式を解くことでHJ方程式の解を見つけることが可能となる.また,偏微分作用素の数式処理において主要な計算対象の一つであるパフ系と呼ばれる偏微分方程式系に対し,その解を数値的に評価するアルゴリズムの精度向上に関して,最適制御の観点から検討を行った.以上の検討を進めることで,HJ方程式を解くことによる非線形性を大域的に考慮する制御器・状態推定器の提案や,偏微分作用素の数式処理に付随する問題に対する制御理論的アプローチの提案が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解法アルゴリズムの提案・設計にまでは至れていないものの,非線形システム制御理論において重要な偏微分方程式であるHJ方程式を解くことが,高々有限個の代数方程式を解く問題へと帰着できることを証明できたのは大きな進捗と言える.また,実問題への応用を考えるうえでは,解法アルゴリズムの提案だけでなく,その効率化・高精度化が肝要である.この意味において,アルゴリズムの設計への制御理論の活用に関する知見も得られており,研究の進捗状況は概ね順調と言える.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,HJ方程式から得られるベクトル決定問題が解を持つ条件を検討する必要がある.また,非線形システム制御理論においては,HJ方程式の解の中でも安定化解と呼ばれるものが重要な役割を果たす.本年度では,ベクトル決定問題の解としてこの安定化解を得るための条件や具体的なアルゴリズムについても検討を進める.
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