研究課題/領域番号 |
21K21346
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(帰国発展研究)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
生物学
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
藤田 盛久 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 教授 (30532056)
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研究期間 (年度) |
2022-02-18 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
57,590千円 (直接経費: 44,300千円、間接経費: 13,290千円)
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キーワード | N結合型糖鎖 / リソソーム / パウチマンノース / エキソサイトーシス / 糖加水分解酵素 |
研究開始時の研究の概要 |
リソソームは細胞内外で不要となった生体高分子の分解を行う細胞内小器官である。近年、リソソーム自体が直接、細胞膜と融合する機構「リソソーム・エキソサイトーシス」が様々な生命現象で見られる事が知られ、動的なリソソームの役割が明らかになりつつある。一方、多くの癌細胞では通常の生合成経路では形成されない短鎖N結合型(パウチマンノース)糖鎖の量が増加し、細胞表面や分泌タンパク質上の糖鎖にも検出される。本研究では、リソソーム・エキソサイトーシスを制御する因子の同定を行うとともに、短鎖N結合型糖鎖の生成機構と細胞表面へ露出する意義について遺伝学的、生化学的および細胞生物学的手法を用いて解析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、哺乳動物細胞細胞において、パウチマンノース糖鎖を有するタンパク質がどのように形成され、細胞外や細胞表面に露出するかを明らかにすることを目的としている。昨年までに、パウチマンノース糖鎖がリソソーム・エキソサイトーシスによって、細胞外に露出することを明らかにした。本年度は、癌細胞株においてリソソーム・エキソサイトーシスがどのように機構で制御されているのかを明らかにすべく、解析を行った。まず、CRISPR KOライブラリーを用いて細胞に変異を導入し、細胞表面に露出したLAMP1タンパク質が減少した変異細胞を濃縮し、責任遺伝子の同定を行なった。その結果、非典型型ミオシンであるMYO18Bに変異が入ることにより、LAMP1の細胞表面発現が低下することを明らかにした。実際に、MYO18B遺伝子をHeLa細胞やU2OS細胞でノックアウトしてみると、LAMP1の細胞表面発現が低下し、MYO18B遺伝子を相補することにより、発現が回復した。ノックアウト細胞では、パウチマンノースの細胞表面量の低下やリソソーム酵素であるヘキソサミニダーゼの細胞分泌も低下していたことから、MYO18Bはリソソーム・エキソサイトーシスを正に調節していることを明らかにした。全反射蛍光顕微鏡とpH依存的蛍光タンパク質ecliptic pHluorinを融合したVAMP7を用いて、リソソーム・エキソサイトーシスの可視化を行った。その結果、MYO18Bノックアウト細胞では、リソソーム・エキソサイトーシスの頻度が優位に低下していた。さらに、MYO18BのN末端領域がノックアウト細胞の表現型を相補するのに重要であることを見出した。現在、MYO18Bがどのような機構でリソソーム・エキソサイトーシスを調節しているのかを解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝学的解析から、リソソーム・エキソサイトーシスに重要な因子であるMYO18Bを見出すことができた。MYO18Bは非典型のミオシンであり、アクトミオシン束形成に重要であることが示唆されている。事実、MYO18Bのノックアウト細胞では、細胞内に多くのストレス・ファイバーが見られた。このことから、アクトミオシン束がどのようにリソソーム・エキソサイトーシスを制御しているのかを顕微鏡解析と生化学的解析によって明らかにしようとしている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、リソソーム・エキソサイトーシスとアクトミオシン束の関係を明らかにする。特に、アクトミオシン束は細胞外マトリクスと細胞間を繋ぐ焦点接着斑と結合し、細胞移動に寄与していることが知られていることから、リソソーム・エキソサイトーシスとの関係を解析する。さらに、リソソームが細胞膜に融合する際、一過的なカルシウムイオン濃度の上昇が必要である。癌細胞におけるリソソーム・エキソサイトーシスを調節する陽イオンチャンネルについても現在解析中であり、今後その実態を明らかにする。
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