研究課題/領域番号 |
21KK0006
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中村 智栄 早稲田大学, 国際学術院, 准教授(テニュアトラック) (30726823)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 心理言語学 / 第二言語習得 / アイトラッキング / 音声情報処理 / プロソディー / 予測的言語処理 / 第二言語処理 / 文処理 / 第二言語学習 / 予測的処理 / 音素 / 文理解 / 眼球運動計測 / 予測的文処理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は, 第二言語の理解において学習者が脳内に持つ言語知識をどの様に柔軟に変化させながら状況に応じた言語理解を行なっているのかを明らかにする. その中で, (1)アイトラッキングを用いた実験手法とウェブカメラを用いた遠隔実験データ収集法, (2)日本語とフランス語という異なる言語を母語とする英語学習者を対象とした実験, (3)ノンパラメトリックパーミュテーション検定による分析方法3つのアプローチから検証を行う.
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研究実績の概要 |
本研究では、日本語、フランス語、英語の母語話者及び第二言語学習者を対象に音声情報の理解プロセスに関する実験を行った。特に、単語レベルの音素情報理解と文レベルのプロソディー情報理解における予測的処理の差異を調査し、その結果から言語理解の認知的メカニズムに関する重要な知見を得た。実験ではアイトラッキング技術を用い、参加者が文を聞きながらその内容を理解する過程でどのように目の動きが変化するかを詳細に記録した。これにより、母語と第二言語の違いが語彙アクセスの速度や精度にどのように影響するかを明らかにした。 さらに、この研究は母語の語順や音声情報が第二言語理解に与える影響を検証するために設計されており、例えば、日本語とフランス語の母語話者が英語の文を理解する際に、それぞれの母語の音韻的特徴や語順がどのように英語の理解プロセスに影響するかを調査した。この分析から、第二言語学習者が直面する言語処理の課題やその克服方法に関する洞察を得た。 プロジェクトの一環として、実験データの分析にはパーミュテーション検定を含む高度な統計手法が採用された。これにより、従来の時系列データ分析における問題点を回避し、より正確で信頼性の高い結果を導出することが可能となった。また、新たな実験手法として、ウェブカメラを使用した眼球運動計測技術を適用し、リモートでデータ収集を行う方法も開発した。 以上の研究成果は、言語理解のプロセスを解明するための基盤を提供するものであり、特に第二言語習得研究において新たな理論的及び実践的な展開を提示した。これにより、言語教育の現場においてより効果的な教授法が提案される可能性が高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトでは、日本語、フランス語、英語の母語話者および第二言語学習者を対象に、音声情報の理解プロセスについての複数の実験を実施してきた。これらの実験は、母語と第二言語の音声処理の違いを明らかにすることを目的としており、特に単語レベルおよび文レベルでのプロソディー情報の処理に焦点を当てている。アイトラッキング技術を用いた詳細なデータ収集が行われ、その分析作業が現在も進行中である。初期のデータ解析からは、第二言語処理における予測的要素が母語処理とどのように異なるかという興味深い結果が得られており、これがプロジェクトの進行における重要なマイルストーンとなった。 さらに、遠隔地での実験手法を取り入れたことにより、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる研究の遅延を最小限に抑えることができた。ウェブカメラを使用した眼球運動計測技術の活用を含むこのアプローチは、参加者が自宅で実験に参加することを可能とするものであった。この技術の導入により、時間や場所の制限にとらわれないデータの収集と分析が可能となり、実験の柔軟性と拡大に寄与した。 これまでの進捗において、特に注目すべきは、実験データの質と量の両面で予想以上の成果が得られたことである。得られたデータは、母語と第二言語の処理違いを統計的に分析するための十分な情報を提供しており、これが今後の研究の基盤となる。また、本研究が国際的研究によるものであることから、データの多様性が保証され、より一般化可能な結果の導出が期待されている。 総じて、本プロジェクトは計画に従っておおむね順調に進行しており、これまでの成果はプロジェクトの目標達成に向けて確かな一歩を示していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトは、言語処理の認知メカニズムに関する理解を深めることを目的としている。これまでの研究成果を踏まえ、今後はさらに詳細な分析と新たな実験の実施に注力する予定である。特に、英語の母語話者を対象とした実験を行うため、夏には5週間程度、共同研究先であるマサチューセッツ工科大学に出向く計画がある。この期間中、第二言語としての英語の処理メカニズムに焦点を当て、母語話者と第二言語学習者の認知的違いを探るための実験を行うとともに、海外の共同研究者とともに成果報告の準備を進める。 この実験では、プロソディー情報を含む複雑な文構造の理解プロセスを検証する。具体的には、英語の母語話者に対して、特定の語彙項目がどのように処理されるか、その認知負荷を眼球運動計測を通じて測定する。得られたデータは、第二言語学習者のデータと比較分析され、言語理解における予測的処理の役割と言語経験が認知機能にどのように影響するかについての洞察を深めることが期待される。 加えて、ウェブカメラを用いた遠隔実験技術の精度と有効性についても引き続き評価を進める。これにより、今後の研究でより幅広い地域からの参加者を対象にデータ収集が可能となり、研究の一般化可能性が向上する。また、データ解析にはパーミュテーション検定を含む先進的な統計手法を用い、より精緻な結果の導出を目指す。 研究成果の普及にも力を入れる。学会での発表はもちろん、分野での影響力の強い国際的学術誌への投稿を通じて、研究成果を広く共有する。これにより、本研究が心理言語学、認知科学、教育学の各分野において貢献することが期待される。 最終的には、この研究から得られる知見を基に、言語習得や言語教育の方法に対する実践的な提言を行うことを目指す。活動を通じ、言語処理の理解を深めるとともに、プロジェクトの成果が言語教育における新たなアプローチの開発につながることを期待する。
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