研究課題/領域番号 |
21KK0020
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分6:政治学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 勇介 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (70290921)
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研究分担者 |
清水 達也 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターラテンアメリカ研究グループ, 研究グループ長 (00450510)
藤澤 奈都穂 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 特別研究員(CPD) (00838443)
石川 登 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (50273503)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | 環境保全ガバナンス / 麻薬代替作物化 / コカ葉 / ペルー / ラテンアメリカ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、麻薬の原料(コカ葉)栽培の代替作物化に中南米で唯一成功したペルーのワジャカ地域の環境保全ガバナンス構築の過程を調査分析し、その成果を基にカバナンス論の理論化を探究する。紛争や対立が昂進する今日、多様な関係者の間で新たな合意や規範をいかに構築するか、つまりガバナンス構築が焦眉の課題となっている。ガバナンス構築の鍵は主要な関係者の間の情報共有にあるとの仮説の下で、現地調査により、近年のガバナンス研究が関心を向けている行政、企業、市民社会の3つのアクター間の相互作用と協働関係の構築過程を緻密に分析し、それをペルーの他の地域での失敗事例と比較研究することにより理論化への足がかりを得る。
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研究実績の概要 |
研究計画の2年度にあたる2022年度は、コロナ後の正常化過程が本格化し、現地調査を実施することができた。そのため、2年度に計画されていた内容に加え、初年度の調査分析でかならずしも十分にできていなかった事項について研究を進めることができ、それを補って余りある成果があったと考えている。現地調査には、勤務先の都合で実現できなかった石川を除く3名のメンバーが赴くことができた。石川は、これまで収集できたデータや文献を精査し、分析枠組み、とりわけ比較にむけた枠組みの検討を行った。現地調査の成果を含め、2022年度は、10月と1月に研究会を実施し、情報共有と議論を行った。 対象地域の麻薬問題で焦点となるのが、コカインの原料となるコカ葉の栽培である。このコカ葉の栽培について、2010年前後に大幅にその違法栽培の代替化に成功したものの、その後のコロナ禍による経済不振とそれからの回復の遅れなどから、近年、コカ葉栽培が少しずつ広まっていることが現地調査の聞き取りで共通した懸念となっていた。さらに、代替作物として広まったカカオについて、主たる市場のヨーロッパで、適切な労働条件の下で栽培されていることや栽培地が適正に登記されていることなど、フェアートレードの新たな輸入条件を付そうとする動きがあり、それに対応するためにかかるコストにより、コカ葉栽培に一層の拍車がかかることが真剣に心配されていた。国や州政府の対応がまったくないことがそうした懸念を強める要因となっていることも理解された。 最後の研究会ならびにその後のフォローアップのために開催した打ち合わせ会合では、海外共同研究者の参加を得て、来年度以降の現地調査のあり方や分析枠組みについての議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度はコロナ後の正常化過程が様々な面で本格化し、コロナによる人口10万人当たりの死者数が世界一となってしまった研究対象国のペルーでも、ようやくコロナ前に復帰する動きが本格的になった。ただ、研究機関を含め多くの組織がその機能の半分以上を回復するまでにはそれなりの時間がかかり、ようやく2022年終わり頃から本研究と関連する諸機関の機能が十分といえるレベルにまで戻った。そうした状況を見極めつつ現地調査を実施したが、その成果は、期待を大きく上回る内容であった。 現地での研究協力者との連携も計画にそったもので、調査のための細かい調整など滞りなく進んだ。また調査結果の分析や分析枠組みの検討においても、海外研究協力者とかなり踏み込んだ議論を現地での対面で実施できた。 初年度に実施できなかった現地調査に起因する調査データの不足などは今年度で解消し、来年度以降の展開にむけての分析も計画の想定に見合うレベルにすることができた。 ただ、ペルーでのコロナ禍からの回復が徐々とした進みで一定の時間を要したことから、当該年度中に所在を確認し電子化して現地から持ち帰る計画をしていた現地でのみ入手可能なデータやマスメディアの情報の収集と電子化を支援するアルバイトの確保に時間がかかり、所在の確認に手間取ったこともあって、そのすべてを入手ないし電子化することができなかった。また、流通の問題から、英文の専門書で発注段階では入手可能であったものの、結果的に年度末までに納品ができなかったものが少なからずあった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度から研究計画の後半に入る。幸いコロナ禍については現地調査の実施の有無を懸念する必要はないレベルになっているので、研究計画に従い、現地調査を実施しつつ調査分析を進める方針で、研究自体は加速的かつ集中的に実施してゆくようにしたい。 ただ他方、コロナの影響も含め2010年代後半からの経済社会情勢の悪化に伴い、デモをはじめとする抗議活動が活発化してきており、近年の政情不安の原因となるだけでなく、それ自体、大きな社会問題となっている。同時に、一般治安の悪化も進み、場合によっては、現地調査の実施に影響が出る可能性が否定できない。直接の調査対象地であるサンマルティンは、現時点ではペルーの他地域と比較して安定しているため、年度の当初から懸念する必要はない。それでも、2022年12月に実際に観察されたように、何らかのきっかけで事態が急速に不安定化かつ無秩序化することは念頭に置いておくべきで、情勢を冷静に見据えつつ、海外研究協力者とも綿密に連携して迅速かつ柔軟な対応が何時でも可能な態勢は整えておく。 以上の注意を払いつつ、調査研究自体は計画の目的である麻薬代替作物化が現実となった要因、とりわけそれを推進できたガバナンスがどのように構築されたのかについて、他の事例との比較の実施を意識しつつ、サンマルティンの事例について研究チームとしての結論を考えてゆくことに主眼を置く。現地調査の際には、入手を計画しながら十分に収集しきれていない現地でのみ得られるデータやマスメディアの情報を含め、研究分析に必要な情報やデータの収集を引き続き実施する。
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