研究課題/領域番号 |
21KK0025
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三嶋 恒平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (90512765)
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研究分担者 |
會田 剛史 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センターミクロ経済分析研究グループ, 研究員 (40772645)
大塚 啓二郎 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 特命教授 (50145653)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | スピルオーバー効果 / 海外直接投資 / 国際経営論 / タイ / 日本人技術者 / 組織能力構築 / 自動車産業 / 発展途上国 / 日本人コンサルタント / 能力構築 / ダイナミック・ケイパビリティ / 組織能力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は発展途上国における海外直接投資が地場系企業に与える影響について考察し、重要な情報は無償で得られるものではなく、地場系企業による対価の支払い、投資と学習が必要であることを主張する。 そこで本研究ではFDI誘致と地場系企業の発展に成果を収めたタイ自動車・二輪車産業を事例とする。本研究は両産業に属する地場系企業、日系企業、地場系企業のコンサルタントをしている日本人技術者にアンケート調査、訪問調査を行い、外資から地場企業への情報伝達について実態解明を図る。こうした調査を踏まえ、本研究は企業の組織能力に着目した事例研究、情報伝達を巡るパネルデータ作成、これらに基づく計量分析による実証研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は発展途上国における海外直接投資(FDI)が発展途上国の地場系企業に与える影響について考察することにある。先行研究では情報のスピルオーバー効果が途上国の経済発展において重要とされたものの、発展途上国の地場系企業は対価を支払うことなく重要な情報が得られるものと暗黙のうちに仮定されてきた。しかし本研究では、実態調査を踏まえて、重要な情報は無償で得られるものではなく、地場系企業による対価の支払い、投資と学習が必要であることを主張しようとしている。これを踏まえ、2022年度は3点において特に研究の進捗がみられた。 第1に、FDI論、国際経営(IB)論におけるスピルオーバーに関する先行研究をサーベイし、FDI論とIB論の理論的統合を試みたことである。こうした試論については学会での報告も行いながら、考察を深めているところである。 第2に、タイでの実態調査の準備を進めた点である。コロナ禍によりタイでの調査開始が遅れたものの、2022年度の夏以降、タイへの現地調査を数回行うことができた。具体的な調査準備は、質問票の作成と改善、インターネット上でのアンケートフォーマットの作成、調査対象へのアプローチのためのデータベースの作成、質問票回答の回収率向上のための調査会社の選定と打ち合わせ、であった。これらを踏まえることで、2023年度にはTAPMA会員企業約700社を対象とした質問票調査を実行できるようになった。 第3に、タイ自動車産業における地場系企業の創業と外資系との取引関係に焦点を当てた論文執筆である。タイの研究協力者であるChadatan Osatisを2022年度に日本に招き、何度も対面での議論を行うことができた。この論文は2023年度の公刊を目指し、執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況として「やや遅れている」を選択したものの、これは研究チームの要因というよりも、コロナ禍による調査環境の変化に起因した。そのため、 2022年度の本研究は主に次の2点に焦点を当てながら、研究の推進を図った。 第1に、大規模質問票調査の準備である。コロナ禍により開始が遅れたものの、本研究は2022年度に質問票の作成、Googleフォームにおけるフォーマットの作成、質問票回収のための調査会社の選定を行うことができた。こうした調査準備の進展により、2023年度におけるTAPMA会員企業708社への質問票調査の実行可能性が高まった。 第2に、論文の執筆、発表である。本研究は大規模調査から得られたデータに基づいた実証分析を主目的とした。コロナ禍により、大規模調査の実行が難しかったため、データの収集が進まなかった。しかし、タイ自動車産業における地場系企業の発展プロセスやそこでの日本人技術者の貢献は、実務での重要性に比べて、研究蓄積は乏しかった分野である。そうした研究動向と実態の乖離を踏まえ、本研究はこれらに関する論文執筆を進めることができた。2022年度の研究を踏まえ、今後、国内外での学会報告やそれらのジャーナルでの掲載を目指していく。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は2022年度以上にコロナ禍による制約が弱まると考えられ、本研究を巡る調査環境は一層改善されると予測できる。こうしたコロナ禍が改善し、海外調査が可能になるという前提のもと、今後の研究の推進方策として次の2点をあげたい。 第1に、大規模質問票調査の実行である。本研究は2023年度においてTAPMA会員企業708社の質問票調査に対する回答の収集に焦点を当てる。海外のトップジャーナルでの論文掲載を目指す場合、質問票調査の回答率は高い数値を求められることが多い。そのため、本研究は、タイのトップ大学であるチュラロンコン大学に属するタイ人研究者を研究チームに加えたことに加え、タイの調査会社を活用し、回答率の向上を目指す。 第2に、情報のスピルオーバー効果に関する学会報告と論文執筆である。情報のスピルオーバー効果の実証分析を行うためには、大量データに基づく、計量分析が必要である。2023年度、本研究は上記の大規模調査によりデータを収集できる見通しであり、このデータを活用して計量分析を進めていく。データの収集状況にもよるが、適宜、国内外での学会報告を行い、ジャーナル掲載を目指して執筆を行っていく。
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