研究課題/領域番号 |
21KK0042
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
|
研究機関 | 大阪公立大学 (2022-2023) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
山 祐嗣 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (80202373)
|
研究分担者 |
山 愛美 京都先端科学大学, 人文学部, 教授 (00230300)
橋本 博文 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (00759714)
中村 紘子 (鈴木 紘子 / 中村紘子) 東京電機大学, 理工学部, 研究員 (30521976)
眞嶋 良全 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50344536)
山本 佳祐 京都文教大学, 総合社会学部, 講師 (80964973)
前田 楓 立教大学, 現代心理学部, 助教 (80907452)
|
研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
|
キーワード | 二重過程理論 / 比較文化研究 / モラルジレンマ / 疑似科学的推論 / 合理性 / モラル推論 / 宗教的信念 / 直感的推論 / 熟慮的推論 / 宗教的推論 |
研究開始時の研究の概要 |
宗教的推論は、直感的システムと熟慮的システムを仮定する二重過程理論では前者によって行われると想定されてきた。しかし、日本人においては熟慮的システムと結びついていることが示されている。本研究では、この違いを、東洋人は、カルマを熟慮的に受け入れている(カルマ仮説)、あるいは熟慮的思考と直感的迷信を弁証法的に受け入れている (弁証法的共存仮説) 可能性と想定する。日・仏・英において、認知的負荷によって熟慮的システムを抑制する実験、熟慮的思考を測定する質問紙と宗教的信念の質問紙の相関を検討する実験、熟慮的な判断と直感的な宗教的モラル推論の弁証的共存を測定する実験を実施し、両仮説を検証する。
|
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、二重過程理論で想定される、内省的システムが直感的システムの非規範性をどのように制御できるのかという問題を背景に、合理性についていくつかの側面から検討された。直感的システムには進化的な合理性があると想定されるが、現代社会では非規範的出力を生み出すことがしばしばある。それは、宗教的迷信であったり、狭い共感であったり、自己中心的なモラルであったりする。Yama H.(2024)は、この制御について歴史的自然実験を材料として検証し、直感的システムに結びついている共感の重要性を強調した。すなわち、暴力・殺人・迫害が減少した欧州の啓蒙主義の時代、戦争・暴力・犯罪が減少し人権意識が高揚した第二次世界大戦後は、小説・物語の普及による弱者への共感が強くなった時代と推定できるわけである。また、Yamamoto (2024)は、犠牲者への共感の高まりである犠牲者同定効果について、良きモラルに結びつく可能性と直感的システムがもつ適用範囲の狭さの可能性を挙げている。Nakamura et al. (2024)は、条件的推論への人間の関係性とポライトネスの影響について論じている。なお、これらは、パリで企画された第2回目のHuman and Artificial Intelligenceで発表され、Baratgin, Jacqet,& Yama (2024)の編集による書籍に収録されている。また、Maeda, Hashimoto et al. (2023)は、囚人ジレンマゲームにおける合理的協同に与える影響として、協同の結果への注意が重要であると示唆した。また、山(愛)(2023)は、宮﨑駿『君たちはどう生きるか』で映画の解釈の個別性を論じている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外拠点としてTours大学のほかにParis第8大学が加わり、2022年に第1回、2023年に第2回のHuman and Artificial Rationalityの国際会議を企画してそれぞれ成果がもたらされた。2024年度は大阪公立大学において3日間の国際シンポジウムを開催の予定であり、海外から6名、国内からも若手の院生を含む何名かの研究者を招へいする。この国際シンポジウムは、研究成果を発信すると同時に、若手研究者を国際的発信者として育成する目的で行われる。 さらに、山祐嗣は海外研究協力者のVeronique Salvano-Pardieuらとともに、本プロジェクトの中心課題である、宗教的ビリーフと思考スタイルの関係についての日英仏の比較文化研究のデータ収集を終えた。日本人は、宗教的ビリーフを弁証法的に(科学的合理性と両立させるように)抱いていることが推察され、2024年度企画の国際シンポジウム等で発表される予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトでは、内省的システムが直感的システムの非規範性をどのように制御できるのかという切り口で合理性が論じられてきた。この枠組みで、モラル判断の合理性、宗教的ビリーフをどう抑制するかという合理性、さらにそれらの文化的差異(文化的適応の合理性および文化・習慣が形成される合理性)を扱い、材料として、宗教、モラルジレンマ、陰謀論信念や疑似科学的信念等を用いる。宗教的ビリーフについて、現代は、「神は死んだ」と言われているにもかかわらず、宗教的迷信は直感的システムの中に生き残っており、科学的知識と宗教の共存が成り立っている。多神教といわれる日本社会においてはそのような弁証法的共存がうかがわれるが、一方で一神教的伝統が強い欧州においては、異なる宗教の信者間あるいは、信者対無神論者という対立が見られる。このような問題は、実験等によって直接検証ことは難しいが、「合理性」をキーワードに示唆を与えられるような論考を進めていく。
|