研究課題/領域番号 |
21KK0044
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分12:解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
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研究分担者 |
中村 健一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40293120)
松澤 寛 神奈川大学, 理学部, 教授 (80413780)
村川 秀樹 龍谷大学, 先端理工学部, 准教授 (40432116)
兼子 裕大 日本女子大学, 理学部, 助教 (40773916)
佐藤 龍一 福岡大学, 理学部, 助教 (20802599)
Cavallina Lorenzo 東北大学, 理学研究科, 助教 (40881264)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2026年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 非線形拡散方程式 / 漸近挙動 / 定量的解析 / 発展方程式 / 関数解析 |
研究開始時の研究の概要 |
古典的な拡散方程式に対してはフーリエ解析などの手法を用いて解を具体的に表現することができるが,非線形性を伴う偏微分方程式に対してそれは難しい.特に拡散係数が定数ではない非線形拡散を記述する方程式は,その主要部が非線形化されるため線形方程式に対する摂動問題の範疇では扱うことができず本質的に新しい接近法が必要となるため,世界中で大きな注目を集めている.この研究課題は,そのような非線形拡散方程式に対して解の性質や挙動を定量的に解明する国際共同研究である.解の表現が直接的にも近似的にも得られないため,その解析はより間接的なものとなるが,解の定量的な情報を詳細に引き出すことのできる理論を構築する.
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研究実績の概要 |
2022年度は以下の3点について取り組んだ。(番号は交付申請時の計画に対応。) (1) Fast Diffusion方程式に対するCauchy-Dirichlet問題の有限時間消滅解の漸近形に対する収束レートを特定するために、定量的勾配流不等式の証明とそれを用いた新しいエネルギー法を構築した。この手法は近年Bonforte-Figalli(CPAM2021)が開発した非線形エントロピー法とは異なる手法だが、より簡易な議論でかつソボレフノルムに於ける収束レートを直接導出できるという点で優位性を伴う。さらに非線形エントロピー法は低符号解に対してのみ有効だが、ここで開発したエネルギー法は符号変化解への適応性も高い。また2022年度は非退化な符号変化する漸近形に収束するような解を具体的に構築することにも成功した。このような例は空間1次元では比較的容易だが、高次元では非自明である。さらにそのような符号変化解が指数安定になるような対称性を持つ初期値空間の構成も行った。 (3) 分数冪ラプラシアンを伴う非線形拡散方程式に対するCauchy-Dirichlet問題の研究は、解の漸近解析に必要な解の正則性やエネルギー等式が担保されるクラスの解の一意存在性から証明する必要がある。古典的な問題と異なり放物型方程式の古典論が近似解の構成に適用できない。ここではより函数解析的な枠組みで証明を行い、解の正則性およびエネルギー(不)等式やレイリー商の単調性を証明した。F.Salin氏との共同研究。 (4) 非線形拡散方程式に対する時空均質化問題に対する定性的結果を得ている。特に非負値解に対しては正則性の問題を克服できることが明らかになり、拡散項の指数に仮定をすることなく均質化方程式への収束、均質化行列の特徴づけ、修正項付き強収束を行い、非線形拡散の特性がどのように現れるか明らかにした。岡大将氏との共同研究。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナや紛争の影響で海外の研究協力者が来日できなかったこともあったが、予定を調整し、計画全体としては遅延なく進んでいる。まだ研究計画の途中にあり、論文として成果が出揃っているわけではないが、学術誌に採録が決定となり次年度に出版予定の論文や投稿中の論文、さらに論文としてほとんど完成しているものもあり、今後、順次出版されていくものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) これまでに得られた結果は論文として採録されることが決定されており2023年度に出版される。(次年度の報告時に詳細を述べる。)これまでの研究では本研究計画で開発したエネルギー法が符号変化解に対しても有効であることが明らかになっているが、非負値解の場合と同じ収束レートの導出には至っていない。またBonforte-Figalliの研究や本研究によって証明された収束レートは形式的な線形化解析の観点から最適と予想されるものの、非線形問題に対して最適性が証明されているわけではない。これらの問題についても今後検討を進める。(すでに予備的な議論は行っている。)さらに10月にBonforte氏と非線形拡散に関する日欧ワークショプを含む2件の国際会議をマドリードで開催する。 (3) 2022年度に得られたエネルギー解の一意存在性と解の正則性やエネルギー(不)等式に関する結果に基づき、今後、解の漸近形への収束について解析を進める。この課題は引き続き、指導学生であるFlorian Salin氏(東北大学)を研究協力者として取り組む。さらに数値解析法についても Salin 氏や Hivert 氏(EC Lyon)と検討する。 (4) 時空均質化問題は発展方程式に特有の構造を反映するまさに発展方程式に固有の均質化問題と言える。一方、古典的な楕円型方程式に対する均質化問題と比べ、時空均質化問題に関する研究の蓄積は少ない。特に非線形拡散方程式に対する時空均質化問題の研究は稀である。ここでは個々の非線形拡散の特性が均質化方程式にどのような影響を与えるか詳細に調べ、線形拡散の場合には現れなかった拡散の非線形性を介した微視的構造と巨視的構造の相互作用を陽的に記述できるような定性的均質化理論の構築を目指す。この課題は引き続き、岡大将氏(東京大学)を研究協力者として取り組む。
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