研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
超高強度レーザーを固体ターゲットに照射することで、高エネルギーイオンが加速され、その類まれな特徴より医療応用を含む様々な応用分野から着目されて、世界各国において、加速されるイオンビームの良質化の研究が精力的におこなわれているが、加速されるイオンのエネルギーは、未だに医療応用に必要なエネルギー(陽子線で~200 MeV)には達していない。本研究においては、ドイツヘルムホルツ研究所にある有力な技術シーズと我々の新規アイデアを融合させることで、イオンエネルギーの飛躍的な向上を目指す。
本研究の目的は、超高強度レーザーによって生成された高密度相対論的プラズマを制御することで、高エネルギーイオン発生を制御することである。生成される相対論的高密度プラズマを相対論的透過現象を介して、制御可能な「光学的に透明なプラズマとの相互作用」に落とし込み、屈折率の制御により、プラズマを制御する。本研究の実施には、研究を行うのが最適かつ唯一無二のレーザーであるDraco-PWレーザー(ドイツのヘルムホルツ研究所(HZDR))及びKPSIのJ-KAREN-Pレーザーを用い、両者にて結果を再現することで信頼性の高いデータを取得する。今年度は、Draco-PWレーザー、及び、J-KAREN-Pレーザーにおける共同実験を行なった。レーザーの時間波形はわずか数百フェムト秒の間に10桁近く急激に強度が変化するため、時間波形の微小な違いがプラズマのダイナミクスに大きな変化を引き起こす。この情報を得るため、レーザーに対してプラズマが相対論的透過になるタイミングの計測に挑戦した。今年度前半においては、計測手法の確立をDraco-PWレーザーを用いて行い、今年度後半にて、その手法をJ-KAREN-Pレーザーに持ち込んで、実際を行い、厚みを変えたプラスチックターゲット(レーザーの進行方向に異なる密度を持つプラズマを生成することと等価)を用いたデータ取得を行った。前年度と同様、実験がない時は、情報交換、データ解析の議論、次回実験のプラニングなどを、HZDRの研究者と共にウェブ形式での会議を2週間に一度のペースで定期的に行なった。
1: 当初の計画以上に進展している
相対論的透過の時刻を計測する手法に関して、その手法自体の確立を行うことと、データの取得(原理実証)までこぎつけることとは、技術的にかなり大きな乖離がある。本手法では、プラズマを透過後の光と、リファレンス光を干渉させる計測系を構築する必要があり、ビームの引き回しの光路が長いため(~5m)チェンバーを含む導光路における振動成分などがどれほど影響するのかというシビアな問題もあったため、今年度中にデータの取得までこぎつけるのは困難であると考えていた。しかし、プラスチックターゲットに関して、プラズマミラーありの時間波形を用いた条件の、データの取得に成功したこと、さらに、プラスチックターゲットだけならず、金属のターゲットに関しても、相対論的透過現象が起こる時刻に関するデータの一部が取得できたことは非常に大きな前進と言える。
1)Draco-PWレーザーにおいても同様のデータ取得を行うことをR5年度以降に進め、データの信頼性を上げること、かつ、データの統計をためる。2)R4年度に取得できたデータの解析を進めるとともに、Particle-In-Cell(PIC) シミュレーションを行い、シミュレーションにより実験結果を再現することを試みる。また、実験結果が再現できたならば、そのシミュレーション結果を詳細に調べることで、いつの時点でプラズマが相対論的透過な状況になったのか、さらにその際、支配的なイオンの加速メカニズムはなにかを決定する。3)できるだけプラズマが相対論的透過な状況になるのを遅らせ、レーザーの放射圧で加速電場を形成しているイオン群を推し続ける時間が長くなり、結果としてイオンの加速エネルギーが上がる条件(レーザーの時間波形・及びターゲットの密度)を見出す。4)実験にて、3)で得られた条件を再現することを試みる。
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