研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
我々は,NASAの観測ロケットを用いた国際共同実験CIBER: Cosmic Infrared Background Experiment により近赤外域の銀河系外背景放射を観測した結果,その強度と空間的ゆらぎが通常銀河の積算光から超過していることを発見した.この超過は未知天体の存在を示唆しており,宇宙初期やダークハロー浮遊星が起源の候補である.我々はCIBERより一桁高い感度で超過原因を特定しうる新たなロケット実験CIBER-2を計画し2021年6月に第1回の打上げに成功した.本研究では,パラシュート回収した観測装置を次回実験に再利用するサイクルを複数回行い背景放射の超過問題を解明する.
我々は,NASAの観測ロケットを用いた国際共同実験CIBER: Cosmic Infrared Background Experiment により近赤外域の銀河系外背景放射を観測した結果,その強度と空間的ゆらぎが通常銀河の積算光から超過していることを発見した.この超過は未知天体の存在を示唆しており,宇宙初期の天体や近傍銀河のダークハロー浮遊星が起源の候補である.我々はCIBERより一桁高い感度で超過原因を特定しうる新たなロケット実験CIBER-2を計画し2021年6月に第1回の打上げ実験に成功した.2022年度は,第1回実験において確認された観測装置に関する数々の課題を解決し第2回実験を実施した.第1回実験後から顕著になった望遠鏡の主副鏡の表面劣化は基材のアルミ合金上にコートした銀の劣化によるものと確認されたことから,主副鏡を再切削加工したのち,劣化が少ない銀合金を新たなコート材として施工した.フライト品へのコート施工に先立ち試作サンプルを用意し経時劣化を調べたところ,銀と比較して銀合金は劣化が少ないことを示した.日本で組立て調整した望遠鏡は,ロケット実験のとりまとめを行うロチェスター工科大学(RIT)へ輸送し,これを担当する日本チームが現地へ出向いてレンズ光学系や検出器と組合せ冷却光学試験を行った.様々な部品の遮光性能や検出器のノイズ性能を向上させ,すべての課題をクリアできたことから,第2回実験のためNASA Wallops Flight Facilityでの振動試験と総合動作試験を行ったのち,2023年3月にロケット打上げ基地のホワイトサンズ実験場へ移動し,当初の予定どおり第2回の打上げ準備を終えることができた.
2: おおむね順調に進展している
第1回実験における主要な課題の一つには,アルミ合金製の望遠鏡主副鏡の表面に施工した銀のコートが劣化し光学性能を低下させており,これに対して鏡の再切削加工によるコート剥がしののち劣化が少ない銀合金のコートを新規に施工した.改修が終了した望遠鏡をロチェスター工科大学へ輸送し,開発を担当した日本チームが現地へ出向き,レンズ光学系の組込みを行ったのち,低温での光学性能評価を行うことができた.また,第1回実験で問題となったロケット筐体からの熱放射の混入は,問題となる箇所を特定することができたため遮光措置をとるとともに,性能を向上させた熱放射カットフィルターの導入により解決することができた.これにより,当初予定していたとおり,2023年の早期に第2回実験を行うという目標を達成することができた.ただし,新たに導入した銀合金のコートは,試作サンプルを作成する炉とフライト品の鏡にコートする炉で大きさが違い,同じ作成パラメータでも違う出来栄えになったことから,複数回の切削とコートの過程を踏まざるを得なくなり,これにより予定が2-3ヶ月遅延した.プロジェクトのスケジュールへの影響もあり打上げがやや遅延したが,おおむね予定通りと言える.
前述のとおり、ホワイトサンズ実験場における第2回のロケット打上げ準備は2022年度内に終えることができたことから,打上げは2023年4月に実施する予定である.打上げ後は,観測装置を含むペイロード部をNASA Wallops Flight Facilityへ移送し,観測装置の健全性を確認する.その後,ロチェスター工科大学へ移送し,日本チームは現地メンバーと協力し装置の分解・検査を実施する.観測装置に破損がある場合は研究メンバーを米国へ配し観測装置の修復に全力を尽くす.第2回打上げの後は,より完成度の高い装置の状態で第3回実験を行うことを目指す.
すべて 2023 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
The Astrophysical Journal
巻: 926 号: 1 ページ: 6-6
10.3847/1538-4357/ac416f
巻: 926 号: 2 ページ: 133-133
10.3847/1538-4357/ac44ff
巻: 919 号: 2 ページ: 69-69
10.3847/1538-4357/ac0f5b
https://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~matsuura/
https://www.kwansei.ac.jp/s_science/d_pa/research_project