研究課題/領域番号 |
21KK0078
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分24:航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京都立大学 (2022-2023) 筑波大学 (2021) |
研究代表者 |
嶋村 耕平 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (90736183)
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研究分担者 |
葛山 浩 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (80435809)
永田 靖典 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特任助教 (20635594)
山田 和彦 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (20415904)
丹野 英幸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主幹研究開発員 (30358585)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 電磁力エアロブレーキングシールド / 深宇宙探査 / スノーライン / 大気圏再突入 / 極超音速流れ / 極超音速流 / 電磁力ブレーキング / 膨張波管 / 電磁力エアロブレーキング / ヒートシールド / サンプルリターンカプセル |
研究開始時の研究の概要 |
世界の深宇宙探査のターゲットのトレンドとして、これまでの地球近傍の小惑星、火星衛星から、より遠方の始原性の高い小惑星、彗星核、木星土星不規則衛星に注目が集まっている。この新たな深宇宙サンプルリターンミッションでは、「はやぶさ」カプセル設計から逸脱した全く新たなカプセルのヒートシールド技術が必要とされる。本研究では、磁場を利用した高温流れの制御「電磁力エアロブレーキング」技術を実験的アプローチと数値解析的アプローチを融合した技術を確立していく。総エンタルピ100 MJ/kg、を超える国内外の高速衝撃風洞を使用して、当該技術を実ミッションへと導くものである。
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研究実績の概要 |
世界の深宇宙探査のターゲットのトレンドとして、これまでの地球近傍の小惑星、火星衛星から、より遠方の揮発性の高い小惑星、彗星、木星圏不規則衛星に注目が集まっている。この新たな深宇宙サンプルリターンミッションでは、「はやぶさ」カプセル設計から独立した全く新たなカプセルのヒートシールド技術が必要とされる。これまで研究グループでの10年にわたり蓄積した極超音速気流の制御技術である「電磁力エアロブレーキングシールド」技術を実験データと数値解析データの両面から、統合することを目的としている。実験ではシュリーレン可視化法による衝撃波離脱距離の確認を行い、希ガスであるクリプトンやアルゴンを使用したHEK-X膨張波管で秒速10km/s前後の気流でMHD効果の詳細な実験を進めた。電磁石の磁場配列を用いた初期化実験では、電磁力エアロブレーキング効果の衝撃波離脱距離を可視化することに成功し、従来の実験では確認困難であったMHD効果を明確に可視化した。この結果は世界初のものである。同時にCFDによる数値解析を進め、現象についての理解を深めつつある。 さらに、非永久磁石としてのパルスフォーミングネットワークを開発し、従来のネオジウム磁石の約2倍の磁束密度を達成した。これにより、磁場の強度と均一性が向上し、シールド性能が向上することが期待される。今後は、実証実験機としての磁場配列や実機への搭載に向けた検証を進める予定である。 このように、本研究グループはMHD効果を利用した極超音速再突入時の空力加熱制御技術の実用化に向け、実験データと数値解析データを統合し、さらなる技術の確立を目指している。本結果は世界的に見ても類を見ないものであり、今後の深宇宙探査における新たな技術基盤として大きな貢献が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の進捗としては、MHD効果の詳細な実験とその可視化に成功し、CFDによる数値解析を併用して現象理解を深めている点が挙げられる。また、非永久磁石の開発においても大きな進展があり、従来の磁石を上回る磁束密度を達成することで、シールド性能の向上が期待されている。これらの成果は、深宇宙探査や空力加熱制御技術の実用化に向けた重要なステップとなっている。
実験ではシュリーレン可視化法による衝撃波離脱距離の確認を行い、希ガスであるクリプトンやアルゴンを使用したJAXA HEK-X膨張波管(風洞)で秒速10km/s前後の気流でMHD効果の詳細な実験を進めた。シュリーレン可視化法は、衝撃波や境界層の変化を高い解像度で視覚化できるため、当該分野研究において非常に有効である。電磁石の磁場配列を用いた初期化実験では、電磁力エアロブレーキング効果の衝撃波離脱距離を明確に可視化することに成功した。この手法を用いることで、従来の実験では確認困難であったMHD効果を初めて視覚的に確認することができた。この結果は世界初のものであり、同時に、数値流体力学(CFD)による詳細な数値解析も進められており、実験結果と数値解析結果を統合することで、現象についての理解が一層深まっている。また、オーストラリア側での実験でもシュリーレン可視化を高感度化することにより、検証を実施している。
さらに、非永久磁石としてのパルスフォーミングネットワークを新たに開発し、従来のネオジウム磁石に比べて約2倍の磁束密度を達成した。この新技術により、従来の磁石に比べてより強力で均一な磁場を生成することが可能となり、結果としてシールド性能の向上が期待される。この技術の開発は、永久磁石よりも取り扱いやすく安定した磁場を提供するためのものであり、将来的には様々な探査機への応用が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は世界初の宇宙でのMHD実証に向けて、磁力線や磁場の強度による抗力の変化や空力加熱の変化などの基礎データを計測する。具体的には、宇宙環境下での磁場効果を詳細に評価するため、精密なセンサと計測システムを開発し、実際のミッションに適用する。この計測により、磁場の強度や配置が空力特性や熱伝導に与える影響を定量的に把握し、最適な磁場配置を設計するための基礎データを収集する。また、これらのデータは、将来的な深宇宙探査ミッションの設計にも活用される予定である。 次に、パルスフォーミングネットワークを用いた省スペースでかつ大磁場出力可能な磁場生成機構の研究を進める。従来の磁場生成装置は大きくて重いものが多かったが、パルスフォーミングネットワークを活用することで、小型で高効率な磁場生成が可能となる。この技術は、宇宙探査機や人工衛星に搭載する際の重量とスペースの制約をクリアするために非常に重要である。また、磁場の強度や均一性を高めることで、より効果的な高温流動制御が実現できると期待される。具体的な研究内容としては、パルスフォーミングネットワークの回路設計磁場生成の最適化などが含まれる。 さらに、実機モデルの制作と磁場配置、CFDと実験での比較を行う。まず解析と実験結果を比較し、設計の妥当性と効果を検証する。CFD解析は、流体の挙動や熱伝達のシミュレーションを行うための強力なツールであり、実験データとの比較により、モデルの精度を向上させることができる。この比較研究により、理論と実験のギャップを埋め、より現実的な設計指針を得ることが可能となる。 また、オーストラリア側で行われているシュリーレン可視化の高感度化技術を活用し、さらに詳細なデータを取得する。これにより、研究の進展を加速し、打ち上げ実証に早期にに到達することを目指す。
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