研究課題/領域番号 |
21KK0090
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分31:原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小池 克明 京都大学, 工学研究科, 教授 (80205294)
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研究分担者 |
柏谷 公希 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40447074)
後藤 忠徳 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90303685)
多田 洋平 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (50648582)
久保 大樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (90758393)
石塚 師也 京都大学, 工学研究科, 講師 (90756470)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 地下深部温度 / 数理・情報地質学 / 比抵抗分布 / 地化学分析 / リモートセンシング / 熱水流動シミュレーション / インドネシア / バンドン盆地 / 流体流動シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は数理・情報地質学,地球物理学,地球化学,リモートセンシング,数値シミュレーションでの先端技術の応用と統合により,臨界スポットの検出技術の開発,臨界スポットからの流体上昇経路の解明と検証,および持続的資源利用のための発電量予測技術の開発の3点を目的に掲げる。これらにより,地熱貯留層深部で大きなエネルギーをもつ箇所へのボーリング到達を高い確率で成功させ,現在の発電量を倍以上に増加させるとともに,発電可能量とその時間変化を正確に見積もり,長期にわたる持続可能な地熱資源利用法を特定し,低炭素化社会構築への貢献を目指す。研究はバンドン工科大学と共同で行い,バンドン盆地周辺の地熱地区を対象に選ぶ。
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研究実績の概要 |
当初の研究計画に沿い,下記の5項目の研究をバンドン工科大学とバンドン盆地南側に位置するPatuha,ジャワ島中央部に位置するDien,バリ島のBedugulの3つの地熱フィールドを対象として実施した。 ①地下深部の温度分布の解明に関しては,ニューラルクリギング(NK)にキュリー点深度,地温勾配,活火山分布,温泉水の化学成分などの複数の情報を入力することで深部温度の推定精度が向上することが確かめられた。また,温度と圧力条件に基づき,温度分布モデルから臨界スポットの分布形態の検出も試みた。②物理探査による地下深部の透水性の推定に関しては,稠密な観測点分布でAMT探査を実施できる手法を確立し,従来よりも比抵抗分布を高い空間分解能で推定できるようになった。また,比抵抗と岩石物性との関係の検討を進め,ブーゲ重力異常の逆解析結果と組み合わせることで,高温で透水性の高いゾーンを特定できる可能性が示された。③地球化学分析による深部起源流体の検出に関しては,地下浅部のガス中の二酸化炭素フラックスとラドン濃度が高い地点は深部からの熱水上昇域に対応する可能性が高いことを見出した。また,ガスと水試料中の複数の化学成分濃度を用いた地質温度計の適用性を追求し,水-岩石反応に関与した鉱物を考慮することで貯留層温度の推定精度が向上することを明らかにできた。④リモートセンシングによる地下亀裂分布形態推定と熱水パス抽出の高精度化に関しては,昨年度開発した植生ストレスの程度を推定できる植生指数をHISUI画像に適用した結果,熱水やガスの上昇通路となる亀裂候補を特定できることが再確認できた。⑤超高温・高圧域用の熱水流動シミュレーションとしては,深層学習を組み合わせた手法を開発した。また,高温地熱系が形成されているBedugulフィールドの計算精度を向上させたともに, 30年間にわたり92 MWの発電量が見込めることなどを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度もバンドン工科大学(ITB)と共同でインドネシアでの現地フィールドにて調査・計測を実施したとともに,オンラインやITBにて研究打ち合わせと情報交換を行った。昨年度に引き続き,ITBの共同研究者は研究対象の地熱フィールドでガスと熱水試料のサンプリングと分析を進め,Patuhaフィールドで実施した2地点でのボーリング調査による計500 m長のコア試料を,京大側と共同での分析を継続した。XRDによる鉱物組成,XRFによる化学組成,および岩石薄片を利用した流体包有物の均質化温度のデータが概ね得られたが,これらと温度検層データを組み合わせ,貯留層とさらにその深部の温度推定,熱水上昇の通路の特定などの実施中である。これまでの研究成果で,差分干渉SAR処理による地形変化から熱源の位置と大きさを高精度で推定できる手法を開発できたとともに,臨界点に近い高温域までの熱水流動シミュレーションと発電量の予測,および感度分析により各パラメータが計算精度に及ぼす影響を特定できるようになり,これらはGeothermics,Renewable Energy,Journal of Volcanology and Geothermal Researchという地熱科学・工学分野を代表する国際誌に3本の論文として掲載された。また,ハイパースペクトル衛星画像から植生ストレスの程度を推定し,これと高空間分解能DEMからのリニアメント分布とを組み合わせることで高連続性・透水性亀裂を特定できた成果もGeothermicsに投稿し,査読意見に基づく修正版が再査読中である。さらに,ITBで開催された国際地熱ワークショップにて本研究課題の成果に関連する3件の発表を行い,ベトナムでの国際会議でも1件発表し,高い関心が寄せられた。これらに加えて,国際・国内会議で14件の発表を行い,そのうちの1件が受賞している。以上より研究は概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き,上記3つのインドネシア地熱フィールドを対象として当初の研究計画に沿い,下記の5項目の研究を実施する。 ①複数地点での温度検層データ,広域物性データ,微小地震震源データを収集し,NKやベイズ推論を応用して超臨界域までの温度分布を対象フィールド全体にわたり明らかにする。②MT探査と重力探査データを用いて,地下深部までの比抵抗分布と密度分布をそれぞれ明らかにする。これらと①の推定温度分布を組み合わせ,さらに岩石温度と比抵抗の実験関係式も適用することで臨界スポットの要件を満たす高温-高透水性の箇所を特定する。③噴気帯,温泉などからガスの採取を継続し,構成成分の濃度と同位体組成の分析,およびガス地質温度計の適用による地下温度分布からガス起源深度を推定する。この起源深度と臨界スポット候補箇所を統合する。また,熱水を採取・分析し,各元素濃度や同位体比と複数の地質温度計を用いることで熱水起源の推定温度を求め,これと臨界スポット付近の温度との整合性に基づいて,臨界スポット候補を絞り込む。④高空間分解能DEMを用いた亀裂の3次元分布形態推定,ハイパースペクトル衛星画像からの地熱兆候地の抽出,差分干渉SAR処理による地形変化からの熱源の位置と大きさの特定を発展させ,臨界スポットまで繋がる長くて透水性の高い亀裂を特定する。また,その亀裂の地表位置で地中ガスの二酸化炭素フラックスとラドン濃度の測定およびガス組成分析を多くの測点で行い,流体の上昇通路になっていることを確認する。ボーリングコア試料の鉱物組成・化学組成,流体包有物分析も継続し,熱水の上昇経路であることを検証する。⑤超臨界域を含む広い深度範囲での流体の流動形態,気相と液相の混合率,貯留層の温度・圧力を高精度で明らかにするための計算法開発を継続する。これを臨界スポットから得られる発電量とその時間変化の予測に応用する。
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