研究課題/領域番号 |
21KK0092
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分32:物理化学、機能物性化学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊都 将司 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (10372632)
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研究分担者 |
北川 大地 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 講師 (50736527)
五月女 光 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (60758697)
伊藤 冬樹 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (80403921)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | アップコンバージョンナノ粒子 / 励起移動 / 超解像計測 / 励起エネルギー移動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では日仏の中堅・若手研究者がチームを結成し,共役化合物固体が示す高速励起移動の機構解明のために,励起移動の距離と方向をナノ精度で実測する。目的達成のためには,励起位置と励起移動の到達点(蛍光を発する)をナノ精度で決定する必要がある。到達点は顕微蛍光イメージングで得られた発光スポットを2Dガウス関数で解析することでナノ精度決定できるが,回折限界によりレーザー光を集光するのみでは10 nm程度の励起サイズは達成できず,励起位置決定が課題である。そこで,アップコンバージョン発光を示すナノ粒子をナノサイズ励起源とし,励起移動距離と方向の超解像実空間計測を達成する。
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研究実績の概要 |
2022年度は,代表者伊都,分担者五月女は仏側研究グループと協力し,希土類イオンを含むアップコンバージョン(UC)ナノ粒子に対して,波長976 nmの近赤外CWレーザーを励起源として,有機色素固体および共役高分子固体(以下,総称して共役分子固体)中に内包させた単一希土類UCナノ粒子の発光寿命,スペクトル,単一粒子発光イメージなどを測定・取得し,希土類UCナノ粒子から周囲媒体への励起エネルギー移動を評価した。共役分子固体の調製にあたり,伊都,分担者北川・伊藤は協力して候補化合物を選定し,種々の固体作製方法を検討し,目的としたUCナノ粒子内包固体試料を作製した。協力者である大学院生と共にフランス・リール大学に2回滞在し,仏側の共同研究者およびそのグループと共同で上記研究を遂行した。共役分子固体中に内包された希土類UCナノ粒子の発光寿命は,固体基板上に分散固定された(周囲にエネルギーアクセプターとなる共役固体が存在しない条件下の)UCナノ粒子に比べ,より短寿命の発光減衰を示した。また,共役分子固体中に内包された希土類UCナノ粒子を近赤外光で選択励起し,希土類UCナノ粒子および共役固体の顕微発光イメージをそれぞれの発光波長ごとに弁別して取得し,観測された共役分子固体の発光は希土類UCナノ粒子から共役分子固体への励起移動によるものであることが確認できた。さらに,三重項-三重項消滅(TTA)に基づくUC機構で可視域発光するナノ粒子の作製にも取り組んだ。増感剤である有機金属錯体を合成し,発光材である有機色素との混合系ナノ粒子を作製した。このTTA-UCナノ粒子が近赤外励起下で可視発光することを顕微発光イメージング等により確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績概要で述べたとおり,2022年度は希土類UCナノ粒子を主たる対象として,UCナノ粒子から周囲媒体へ励起エネルギー移動が進行するか否かを時間分解発光測定や顕微イメージングなどにより実験的に検証し,希土類UCナノ粒子のナノ励起源としての性能を評価した。エネルギー移動媒体としては有機色素や共役高分子の固体(以下,共役分子固体)を用いた。時間分解発光計測の結果はUCナノ粒子から共役分子固体へのエネルギー移動を支持する結果が得られた。さらに,共役分子固体中に存在する希土類UCナノ粒子を近赤外光で励起した場合のナノ粒子および共役分子固体の顕微発光イメージをそれぞれの発光波長ごとに弁別して取得した。波長弁別された単一粒子レベルの発光イメージを詳細に画像解析し,UCナノ粒子の発光像の解析からは,ナノメートルスケールに局在化した励起位置をナノ精度で決定できることを示し,共役固体の発光像の解析からは,ナノ粒子からの励起移動により,共役固体の発光点(安定化発光サイト)がUCナノ粒子の発光位置に比べて数nmから数十nm程度空間的に拡がっていることを明らかにした。これらの実験結果から,共役分子固体中での励起移動がナノ精度で可視化可能であることを実証した。さらに,異なる系のUCナノ粒子の作製にも成功しており,この成果は,当初計画を上回る進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように,2022年度は希土類UCナノ粒子からの励起移動による共役分子固体のナノスケール局在化励起と,共役分子固体中のエネルギーマイグレーションによる発光スポットの移動をナノ精度で測定することに成功した。今後はこれまでに得られた知見に基づき,希土類UCナノ粒子を用いた励起エネルギー移動の超解像計測手法の確立に向けてさらに研究を進める。具体的には,希土類UCナノ粒子のサイズ依存性や,異なる希土類イオンを発光種としたUCナノ粒子の検討,異なるエネルギー移動媒体における計測などを実施する。フランス側の共同研究者とその研究グループ,分担者(北川,五月女,伊藤)と綿密に協議し,種々の希土類UCナノ粒子を準備すると共に,内部構造(結晶相/非晶質など)や分光特定の異なるエネルギー移動媒体(共役分子固体)を調製する。それらの試料に対して,伊都・五月女・研究協力者(大学院生)はフランス側共同研究者及びその研究グループと協力し,近赤外光によるUCナノ粒子選択励起下でのUCナノ粒子,ホスト固体(およびアクセプター分子/粒子)の発光挙動を顕微イメージング・分光計測し,系の励起ダイナミクスを測定するとともに,超解像法を駆使しエネルギー移動距離を実測する。また上記研究と並行して,三重項―三重項消滅(TTA)によるUC発光を示すナノ粒子(TTA-UCナノ粒子)系の調製と発光特性評価を実施する。代表者伊都と分担者北川・伊藤及び研究協力者(大学院生)は協力して,種々の増感剤-発光剤の組み合わせに対して,再沈法,ボールミルによる機械的粉砕法などを用いて,TTA-UCナノ粒子のサイズ制御を試みる。得られたTTA-UC粒子に対して,伊都・五月女・研究協力者及びフランス側共同研究者は種々の分光計測を行い発光特性を評価する。
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