研究課題/領域番号 |
21KK0099
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分37:生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉田 将人 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80511906)
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研究分担者 |
岩崎 有紘 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (00754897)
植草 義徳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (30753024)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | シアノバクテリア / ペプチド / 海洋天然物 / 熱帯病 / 天然有機化合物 / 単離・構造決定 / 全合成 |
研究開始時の研究の概要 |
海洋シアノバクテリア(藍藻)を起源とする天然有機化合物(以下、天然物)は、特徴的な構造多様性に富むだけでなく、高い生物活性を示し、創薬研究を推進する上で有用な化合物を多く含む。本研究では、シアノバクテリアから生産される生物活性天然物、特にペプチド系化合物に焦点をあてる。米国カリフォルニア大学Gerwick教授との国際共同研究の推進を通じて、海外原産難培養性シアノバクテリアの培養方法の確立、および生物活性天然物の探索を実施し、有機合成化学による誘導体合成法の確立と構造活性相関研究へ展開することで、リード化合物創出のブレークスルーとなり得る創薬基盤の構築を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究では、シアノバクテリアから生産される生物活性天然物、特にペプチド系化合物に焦点をあて、米国カリフォルニア大学Gerwick教授との国際共同研究の推進を通じて、海外原産難培養性シアノバクテリアの培養方法の確立、および生物活性天然物の探索、有機合成化学による誘導体合成法の確立と構造活性相関研究へ展開することで、リード化合物創出のブレークスルーとなり得る創薬基盤の構築を目標としている。令和3年度は難培養性シアノバクテリア由来の天然物の単離、合成について検討し、以下にその概要を示す。 ・抗リーシュマニア活性を示す鎖状リポペプチドviridamide類の全合成を検討し、Gerwickらによって提唱された構造に誤りがあることを明らかにした。構造改訂に向けて異性体の合成を進めた結果、構成アミノ酸の立体配置に誤りがあることを見出したが、依然として天然物とNMRスペクトルが一致しないことがわかった。構造決定および構造活性相関研究に向けて、多様性指向型合成法の確立を検討している。 ・Gerwick研との共同研究によって構造活性相関を明らかにした抗トリパノソーマ活性をもつペプチド性天然物Iheyamide類について (J. Nat. Prod. 2021, 84, 2587.)、全合成を通じて本化合物の量的供給を達成した。さらなる生物活性を明らかにするために、合成品をもちいてエボラ出血熱とCOVID-19を対象としたウイルス感染阻害活性試験を検討している。 ・海洋シアノバクテリア抽出物に含まれる化合物群の分子ネットワークを構築した。この分子ネットワークを手がかりとして新規化合物を単離し、honuaiakeamide類と命名した4種の平面構造を決定した。さらに、このシアノバクテリアのゲノム解析によって予測された生合成遺伝子クラスターの一つが、これらhonuaiakeamide類の生合成を担っていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・Viridamide類の作用機序解明に向けて、合成経路を確立することができたが、天然物の構造に誤りがあることが明らかとなった。この構造決定に向けて、Gerwick研での再培養による天然物の取得、および異性体の合成を進めている。 ・新たにエボラ出血熱とCOVID-19を対象とした抗ウイルス活性の評価が可能となった。これらの評価系を用いて、複数の新規天然物の評価が進行中である。本研究がカバーする疾病領域が広がることで、より多様な創薬シード天然物の発見が期待される。また海洋シアノバクテリアの培養環境の構築に向けて振とう培養器を導入し、培養条件の予備検討を行っている。 ・分子ネットワークを駆使した天然物の網羅的探索法がうまく機能しており、海洋シアノバクテリアの培養株より、新規化合物の発見およびそれら生合成遺伝子クラスターの解析が順調に進んでいる。さらに、このシアノバクテリアから単離されている既知化合物の類縁体も複数発見することができている。しかし化合物の収量が少ないことから、生物活性試験には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
・再培養によりviridamide類が取得できた場合には、NMRによる構造解析により平面構造を改めて決定する。また、異性体合成を進めることで得られる化合物については、抗リーシュマニア活性などの評価を検討する。さらにDP4解析などペプチド系化合物の構造予測手法を検討し、実際に合成を検討することでその精度を検証する。 ・Iheyamide類が抗ウイルス活性試験で有望な結果を示した場合は、確立した全合成ルートを用いて人工類縁体を調製し、構造活性相関を明らかにする。 ・Honuaiakeamide類の絶対立体配置をスペクトル解析および天然物化学的手法により決定するとともに、生物活性試験に必要な量を再培養により確保する。また、同位体標識した栄養源を用いて培養することにより、honuaiakeamide類の生合成に用いられる開始基質を明らかにする。さらに、分子ネットワーク解析によって示唆されている他の新規化合物の発見を目指す。 ・天然物探索については、Gerwick教授と共同でカリブ海でのサンプル採集を実施し、入手したサンプルに含まれる新規生物活性天然物の探索を行う。有望な天然物を生産するシアノバクテリアについては、培養法の検討を行う。
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