研究課題/領域番号 |
21KK0110
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分39:生産環境農学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター (2022) 国立研究開発法人理化学研究所 (2021) |
研究代表者 |
徳永 浩樹 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 熱帯・島嶼研究拠点, 任期付研究員 (30768479)
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研究分担者 |
湊 菜未 新潟大学, 自然科学系, 助教 (60843430)
キム オッキョン 東京農業大学, 農学部, 助教 (60737112)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2021年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | キャッサバ / キャッサバモザイク病 / 熱帯作物 / 東南アジア / Cassava mosaic virus |
研究開始時の研究の概要 |
キャッサバは熱帯・亜熱帯地域で栽培される塊根作物である。キャッサバモザイク病 (CMD) は世界の作物病害のうち最も深刻なウイルス病の一つであり、生育を著しく抑制し収量を大きく減少させる。近年東南アジアにモザイクウイルスが侵入して深刻な被害を及ぼしている。本研究ではベトナム農業遺伝学研究所及びベトナムのフンロック農業研究センターと共同で、CMD抵抗性品種開発の為の基盤技術を確立する。CMD抵抗性を評価する方法を定め、DNAマーカー選抜及びゲノム編集の2つの分子育種戦略を立てる。抵抗性遺伝子の有効性を評価して、CMD抵抗性を付与する効率的かつ実用的な技術構築を目指す。
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研究実績の概要 |
近年東南アジアではSri Lankan cassava mosaic virus (SLCMV) によるキャッサバモザイク病 (CMD)が甚大な被害をもたらしている。本研究ではアジアのキャッサバ栽培品種にCMD抵抗性を効率的に付与する技術の開発をベトナムの研究機関との国際共同研究で進めている。
1) 媒介昆虫であるコナジラミや特殊な機材を用いないSLCMVの接種法の検討を行なった。SLCMVをアグロインフィルトレーション法により感染させたベンサミアナタバコの葉を磨砕し、汁液をキャッサバの葉に擦り付け接種を行った。その結果、PCRにより上葉においてSLCMVのDNA-AおよびDNA-Bが検出されたことから、本手法によりキャッサバへのSLCMV感染が可能であることが示された。 2) 長年CMD抵抗性に関わるCMD2遺伝子座の存在が示唆されてきたが、有効なマーカーは開発されていない。2022年度に Lim, YW. et. al (2022) により、CMD2型の抵抗性に関わる原因がDNAポリメラーゼのサブユニットの一つPOLD1の変異であることが報告された。そこでPOLD1遺伝子の変異アリルを識別するマーカーを新たに設計した。その結果、予備的な試験であるがCMD抵抗性系統とアジア栽培品種間の交配後代20系統の圃場での抵抗性試験および遺伝型判別から、新規のマーカーの有効性が確認できた。 3) ゲノム編集でキャッサバにCMD抵抗性を付与する為、抵抗性候補遺伝子の機能解析を行なっている。上記1) のSLCMV感染性クローンをベンサミアナタバコに接種する際に、抵抗性候補遺伝子の一過的発現ベクターを先行接種すると、葉巻などの病徴が軽減されることが分かった。現在、候補遺伝子を35Sプロモーター下流で発現させた形質転換キャッサバを作出しているところであり、今後抵抗性を確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中に研究代表者が所属機関を異動したことに伴い、共同研究契約書の変更や材料移転、実験環境のセットアップに時間を要した。特にベトナムの研究機関も含めた5機関の共同研究契約が必要であるが、今回、これまでの共同研究契約に対して、新たに研究代表者の機関の追加や役割分担の追記を加えて契約書を変更した(2023年3月締結)。また、ゲノム編集技術について、研究材料の移転に関してのsMTAの締結やキャッサバ品種の移転に時間がかかってしまった(2023年5月受け取り)。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の所属機関の異動や研究の進捗に伴い、下記のような変更点がある 1) CMD抵抗性の評価およびスクリーニング方法の確立。これまで、いくつかのSLCMVの接種法を検討してきたが、SLCMV感染性クローンを用いた接種法が有効であることが分かってきた。この方法をベトナム農業遺伝学研究所で実施する計画であるが、新潟大で用いているSLCMVはカンボジア由来である為、新たにベトナム国内で感染株の採取、ベトナム農業遺伝学研究所においてSLCMVのクローニングと感染用ベクターを作製することにした。 2) CMD抵抗性のDNAマーカー開発とアジア品種への抵抗性付与。研究実績で上述のように、最近CMD2型の抵抗性に関わる遺伝子POLD1が報告された。POLD1遺伝子の変異アリルを識別するdCAPsマーカーを新たに設計して予備的に調査したところ、マーカーの有効性が示唆された。今後は、本課題で作出したCMD抵抗性系統とアジア栽培品種間の交配後代に加えて、ベトナム農業遺伝学研究所がもつキャッサバ遺伝資源も活用して、大規模で多様な遺伝背景をもつ集団からマーカーの有効性を確認する計画を立てた。 3) 実用的なゲノム編集技術と抵抗性遺伝子の機能解析。当初研究代表者は前所属の理化学研究所で本研究を進める予定であったが、異動に伴い、植物材料移転sMTAや他の共同研究機関との共同研究契約の締結に時間を要してしまった。また、本研究はキャッサバのカルス誘導準備や形質転換系確立が必須であり、その準備や実験系の整備に期間を要することが予想される。そこで理化学研究所の関原明博士(研究代表者の前所属長)が研究分担者として本課題に参画、共同で本研究を進めることになった。
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