研究課題/領域番号 |
21KK0151
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分55:恒常性維持器官の外科学およびその関連分野
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳沢 裕美 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 教授 (40746301)
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研究分担者 |
杉山 夏緒里 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (20889662)
神吉 佐智子 大阪医科薬科大学, 医学部, 講師 (40411350)
木村 健一 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (50633153)
石井 柳太郎 筑波大学, 医学医療系, 特任助教 (90907669)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ミクロフィブリル / 大動脈解離 / マウスモデル / 弾性線維 / シグナリング / 結合実験 / 電顕 / モデルマウス / 細胞外基質 / 微小領域RNAシークエンス |
研究開始時の研究の概要 |
大動脈解離は大動脈中膜で解離を生じ、大動脈壁が脆弱になる病態で、解離が広範囲な場合や大動脈瘤破裂に進行すると循環不全を引き起こし死に至る。現在では大動脈解離と大動脈瘤は病因的に分けて考えられているが、大動脈解離の発症と進行の分子機序は未だ解明されておらず、この致死的疾患を予防・軽減するための効果的な治療法を開発することが急務となっている。本研究では、申請者らが独自に作製した異常ミクロフィブリルを有する大動脈解離マウスを用いて、国際共同研究により、生化学的・分子生物学的解析と解離の病理解析を統合し、ミクロフィブリル上の分子相互作用のランドスケープを明らかにし、疾患の病理像に繋げることを目指す。
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研究実績の概要 |
大動脈解離は大動脈中膜で解離を生じ、広範囲に広がる病変により循環不全に陥ったり、大動脈瘤破裂に進行するため致死的になる。これまで解離と大動脈瘤の発症メカニズムは同じものだとされてきたが、現在では両者は病因的に異なると考えられている。しかし、大動脈解離の発症と進行の分子機序は未だ解明されていない。 大動脈の弾性線維形成に必須のミクロフィブリルの異常による大動脈壁の脆弱性が、大動脈解離の根底をなすことが近年示唆されている。ミクロフィブリルは「組織の構築と保持」に加え、大動脈壁でのTGFbシグナル制御のハブ的役割を担っている。また、弾性線維―接着斑―細胞内骨格を介した大動脈疾患発症への関与が報告されるなど、ミクロフィブリルの新たな生物学的役割が注目されている。 本研究の目的は、ミクロフィブリルの主要構成成分であるFibrillin-1の異常を有する新規大動脈解離マウス(ADマウス)を用いて、変異ミクロフィブリルと大動脈解離の分子病理学的解析を統合的に進め、大動脈解離発症予防と治療法を確立するための基盤を築くことである。そのために、ミクロフィブリルの生化学、大動脈疾患の循環遺伝学、トランスクリプトーム解析の専門家を招集し国際共同研究チームを組織し研究を遂行している。本年度は野生型と大動脈解離マウスの平滑筋細胞を単離して、Fibrillin-1, elastin、fibronectinなどの弾性線維の形成に必須な因子の分泌や弾性線維の形成過程を観察した。興味深いことに、AD平滑筋細胞では、fibronectin やfibrillin-1の分泌は、野生型と比べて10日ほど遅れて観察され、弾性線維の形成も野生型と比べて遅れていいた。ADマウス大動脈では、生後7日ですでに弾性線維の断裂が認めらており、3週、5週と断裂部が増加していくことも観察した。また、より定量的に断裂部位を観察するためにシンクロトロンによるイメージングを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年度はCovid19による渡航規制も緩和されたため、8月にはパリで米国、ベルギーの研究者と打ち合わせをすることができた。サンプルの解析のためのプログラムを日本側でインストールし、ベルギーのイメージデータにアクセスすることができるようになった。大動脈壁のマイクロダイセクションの病変を解析するために、生後5週の野生型と解離マウスのサンプルをベルギーの共同研究者に送り、シンクロトロンイメージンの解析に着手した。また、試薬の共有と定期的なデスカッションを行うことができた。国際共同研究をベースに、マルファン協会がサポートする国際グラントに応募することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)変異FBN1の生化学的特性の解析:変異FBN1の生化学的特徴を、線維芽細胞を使ったセクレトーム解析や、RNA-シークエンス、ミクロフィブリル構成因子との結合能の実験などを通してさらに進める。 (2)大動脈解離の経時的病理変化の多角的解析: ADマウスの内膜亀裂前に起こる炎症細胞の集積に着目して、細胞の特徴抽出を行う。また、Sakai らが確立したFBN1DH やGT8マウスの大動脈のミクロフィブリルの形態や解離部の電顕解析などを行う。ADマウスから採取した大動脈のシンクロトロンイメージングを継続して行う、生後14日(解離前)、および生後35日のミクロ断裂部位を可視化する。 (3)解離発症前後の21日と35日でのsingle cell RNAシークエンス と微小領域RNAシークエンス の解析を継続して行う。
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