研究課題/領域番号 |
21KK0170
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分58:社会医学、看護学およびその関連分野
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
姫野 誠一郎 昭和大学, 薬学部, 客員教授 (20181117)
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研究分担者 |
角 大悟 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (30400683)
原 俊太郎 昭和大学, 薬学部, 教授 (50222229)
岡村 和幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (50736064)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | ヒ素 / バングラデシュ / 血管障害 / 糖尿病 / 筋肉 / 脂肪代謝 / 老化 |
研究開始時の研究の概要 |
世界各地のヒ素汚染地域において、皮膚症状や皮膚がんに加え、高血圧、糖尿病、心疾患などの代謝性疾患が増加している。しかし、その機構は未解明である。本研究では、バングラデシュ Rajshahi大学と共同でヒ素汚染地域でのフィールド調査を行い、ヒ素による代謝性疾患発症機構の解明を目指す。ヒ素が筋肉の量や機能に影響を及ぼし、それが代謝性疾患につながっているという仮説に基づき、米国ピッツバーグ大学の筋肉研究の専門家、及び国内の脂質代謝や細胞老化の研究者と共同で基礎研究も実施する。日・米・バングラデシュ3か国での国際共同研究により、なぜヒ素が代謝性疾患を増加させるのかを解明する。
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研究実績の概要 |
バングラデシュでの調査については、姫野が2022年度に2回バングラデシュを訪問して、体組成計と筋力測定装置を用いた調査の準備を行い、予備調査を実施した。調査が可能であることが分かったので、2022-2023年度にラジシャヒ大学のHossain教授および学生らが中心となって、ヒ素汚染地域および非汚染地域の住民を対象として本調査を実施した。これまでに約500名からデータを収集した。2023年11月に姫野がバングラデシュを訪問した際、Hossain教授らとデータ解析を進めた結果、ヒ素汚染レベルが高くなるほど筋肉量が低下し、筋力も低下すること、逆に体脂肪量が増加していること、しかしBMIには変化がないことを見出した。また、体脂肪量のマーカーとして注目されている血清レプチン濃度と体脂肪量が相関することを見出した。これらの結果は、ヒ素汚染によって筋肉量と筋力が低下し、同時に体脂肪量が増加するサルコペニア肥満が起こっていることを示す。ヒ素汚染による血圧上昇、耐糖能低下の原因にサルコペニア肥満が関与している可能性が示唆された。 岡村は、米国ピッツバーグ大学の共同研究者Barchowsky教授の研究室に長期滞在し、細胞レベルで無機ヒ素が筋肉に及ぼす影響を検討した。マウス筋芽細胞株C2C12を亜ヒ酸に曝露すると細胞分化が阻害されること、また、ミトコンドリアマーカーのATP synthaseの発現量が細胞の分化によって変動する可能性を見出した。角は、C2C12細胞の分化・融合の誘導前、あるいは誘導時に細胞を亜ヒ酸に曝露することにより、筋管形成の阻害と分化マーカーの発現抑制の相関が亜ヒ酸曝露の時期によって異なることを見出した。原は、過酸化脂質生成に深く関わるとされる脂質代謝酵素ACSL4を細胞レベルでノックダウンする系を構築し、C2C12細胞でのノックダウンに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2024年1月に実施されるバングラデシュの総選挙により、選挙前の半年間は国内の治安状況が悪化して調査の実施が困難になることが予測された。そこで、当初の計画を前倒しして2022年度に調査体制のセットアップと予備調査を終わらせた。おかげで2023年の秋に訪問するまでの間に多くのデータが蓄積されていたため、データ解析の段階にまでスムーズに進むことができた。分担研究者の岡村は、2023年度にこの研究費でピッツバーグ大学に約2か月滞在して共同研究者のBarchowsky教授との共同研究を実施した。その後、所属の国立環境研究所からの派遣研究員としてさらに1年間の滞在許可が認められた。そのため、当初の予定より十分な期間をかけて、米国の共同研究者であるBarchowsky教授とともに細胞レベルでのヒ素曝露の筋肉分化への影響について、共同研究をで進めることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度にはバングラデシュの共同研究者であるHossain教授が別の研究費(短期招へい)で来日し、熊本県立大学に2か月間滞在することになったので、Hossain教授とはさらに研究成果のまとめ方、追加サンプルの収集法などについて、熊本あるいは東京で十分な議論ができることになった。また、ラジシャヒ大学にヒ素測定機器が導入されることになったので、バングラデシュ側のヒ素研究体制のセットアップとさらなる充実に貢献するため、姫野が秋以降にバングラデシュを訪問することを予定している。岡村は2024年の8月までピッツバーグ大学に滞在する予定なので、日米間の共同研究は当初の予測よりさらに進むものと期待される。岡村、角、原の3者が筋芽細胞であるC2C12細胞を活用することで多面的なアプローチが可能になることが期待される。
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