研究課題/領域番号 |
21KK0183
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分62:応用情報学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
小野 直亮 奈良先端科学技術大学院大学, データ駆動型サイエンス創造センター, 准教授 (60395118)
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研究分担者 |
飯田 秀博 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 客員教授 (30322720)
下地 佐恵香 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 研究員 (50791563)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | PETイメージング / 深層学習モデル / 診断支援 / 冠動脈疾患 / 代謝疾患 / 深層学習 / 診断支援モデル / PET画像 / 腎臓Perfusionモデル / 長期コホート解析 |
研究開始時の研究の概要 |
糖尿病や重篤な肥満のような慢性的な代謝疾患の予防と治療は高齢化社会における Quality of Life の向上のために重要な課題であるが、その病態は食習慣などの生活習慣、遺伝的背景など複数の要因が複雑に絡んでいることから未解明の部分が多い。PETは血流の変化や代謝物質の動態を非侵襲的に直接測定可能な強力な診断手法であり、心冠動脈疾患や腫瘍の診断など幅広い分野で応用されている。本研究では、精度の高い測定データとTurku大学の持つ大規模な症例サンプルの蓄積に基づき、経験ベイズを利用した確率モデルを用いて代謝状態の比較を行い、診断支援手法を確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度の研究活動では、PET臨床画像データを活用して、下行大動脈の関心領域を自動的に抽出し、その時間放射能濃度変化を定量的に測定するアプリケーションの実装に成功しました。この研究成果は、PET画像解析の精度と効率を大幅に向上させるものです。従来、下行大動脈の分析は専門家の手による時間を要する作業が必要でしたが、開発したアプリケーションにより、このプロセスが自動化され、より迅速かつ正確なデータの提供が可能となります。この技術は、心血管疾患の診断と治療計画の策定において、重要な役割を担うことが期待されています。また、放射能濃度の変化を定量的に捉えることで、病態の詳細な理解にも寄与し、個別化医療の進展に貢献すると期待しています。 さらに、当研究グループは奈良先端大学から博士課程の学生を三ヶ月間、2024年1月から4月まで共同研究先であるフィンランドのTurku大学に派遣し、国際的な研究交流を行いました。この交流により、最新のPET画像分析技術や放射性トレーサーの開発に関する知識及び技術が共有され、双方の研究機関の能力強化と研究の質の向上に寄与しました。学生はTurku大学での研究生活を通じて、異文化間でのコミュニケーション能力や国際的な研究プロジェクト遂行能力を高め、研究者としての視野を広げる貴重な経験を得ることができました。 このように、当該年度の研究活動は技術開発と国際協力の両面で顕著な成果を達成しました。開発したアプリケーションは臨床現場での利便性を向上させると共に、研究交流はグローバルな視点からの科学技術の進展を促進する一助となりました。これらの成果は、医療画像解析の領域における革新的な進歩として、さらなる研究活動の発展に大きな意義をもたらしています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究進捗については、計画通り順調に進行しており、主要な目標のいくつかを達成しています。具体的には、下行大動脈の関心領域のセグメンテーションについては完了しており、これによりPET画像からの自動的領域抽出が可能になりました。この成果は、関連する臨床研究や診断への応用を前進させる重要なステップです。 また、指定された各臓器の関心領域を対象とした灌流係数の定量モデルの構築および高解像度の解析による機能係数画像の生成についても、プロトタイプの開発段階にあります。これらのプロトタイプは初期のテストを経ており、さらなる検証と最適化を経ることで、実用的なツールとしての完成に近づいています。 さらに、開発したアプリケーションを利用しての臨床データの蓄積が順調に進んでおり、これによって得られた大量かつ高品質のデータは、研究の信頼性を向上させるとともに、将来的な臨床応用への橋渡しとなっています。このデータを基に、さらに精度の高い解析が可能となり、医療現場での即時的な診断支援や治療計画の精緻化に寄与することが期待されます。 これらの進捗は、研究が全体的に計画どおり、またはそれ以上に進展していることを示しており、引き続きこれらの研究目標に向けて取り組んでいく予定です。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究アプローチとして、トレーサー濃度の異なる条件下でPETスキャンを繰り返し実施し、異なる濃度のもとでの撮像がPET検査に与える影響を定量的に評価します。得られたデータを基に、より精確なシグナル強度と濃度関係のモデルを構築することを目的とします。データの蓄積と解析を進めるためには、放射線シグナルの物理モデルに基づいた適切な統計的手法を用いてデータを分析する必要があります。また、異なる濃度でのデータが十分でない場合は、ブートストラップ法による画像の再構成によってサンプル数を拡大する手法を適用することを想定しています。 さらに、ブートストラップ再構築法によって得られた画像データをもとに、PETシグナルのノイズの分布を定量化し、シグナルの確率分布をモデル化することでベイズ推定による灌流係数パラメータの予測モデルを構築することを計画しています。この研究アプローチは、PETシグナルからのノイズの影響を理解し、より正確な灌流係数を推定するための新たなモデルを開発することを目指しています。ブートストラップ再構築法を用いて画像データの変動性を評価し、そのデータを基にベイズモデルを用いて灌流係数を推定することで、精度の高い結果を得ることができると考えています。 研究を進行する上での課題には、データの質と量の確保、適切な統計モデルの選定、計算資源の効率的な利用が必要となります。PET検査を行うTurku大学病院PETセンターとの間で、双方の人材交流、2~3週間程度のある程度長期的な滞在による集中的な開発と定期的なオンラインミーティングによる進捗の共有を予定しています。
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