研究課題/領域番号 |
21KK0194
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分64:環境保全対策およびその関連分野
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
桑原 ビクター伸一 創価大学, 教育学部, 教授 (00409773)
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研究分担者 |
菅井 洋太 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (20896930)
今村 弘樹 創価大学, 理工学部, 教授 (20363468)
下出 信次 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (70397090)
藤木 徹一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 主任研究員 (30598248)
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研究期間 (年度) |
2021-10-07 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 海洋プラスチック / 有害微生物 / リモートセンシング / 東南アジア / モンスーン(季節風) / 共焦点蛍光顕微鏡 / Remote Sensing / Macro Plastics / Harmful Algal Blooms / Intertidal Zone / Monsoon |
研究開始時の研究の概要 |
海域に流出したプラスチックデブリには、様々な有害微生物がヒッチハイカーとして付着する。プラスチックデブリの流出源の約8割をアジア地域が占め、なかでも東南アジアからの負荷量は大きい。東南アジア海域では、モンスーン周期によるプラスチックデブリの移動を通じて、有害微生物の分布域拡大や大発生を引き起こす可能性があり、新しい環境リスクとして懸念される。本研究では、同海域におけるプラスチックデブリと付着する微生物群の動態解明と定量化を行う。本研究の成果により、有害微生物とプラスチックデブリの関係と内在する環境リスクが初めて明らかとなり、有害微生物の発生防除に新たな視座を提供することが期待できる。
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研究実績の概要 |
2023年度は、本研究の具体的な目的を達成させる年度となった。本研究の目的は、(1)潮間帯に漂着・散乱するプラスチックデブリの現存量をリモートセンシング(ドローン)により定量化、(2)それに付着した微生物群集とくに有害種を遺伝子工学的手法により定量化、(3)モンスーン周期と関連したその季節的動態を明らかにすることである。現在、当初の計画以上に研究は進展しており、本年度における実績の概要を以下、目的別に記載する。 目的(1)では、決定された観測地点(シンガポール・マレーシア)において、ドローンと5-mの自撮り棒を使って、潮間帯に分布するプラスチックの画像を撮影した。また、マシンラーニングによる画像解析の充実化に向け、データーベースを発展させ、シングルショットディテクター(SSD)を開発した。このSSD法を使用し、識別可能なプラスチックの形状、種類、推定精度を評価することが既に完了している。 目的(2)では、プラスチックデブリにヒッチハイキングする有害微生物の回収方法を確定させた。回収した有害微生物の遺伝子サンプルは、最適化された定量化手法に従って、解析された。さらに、有害微生物が付着するプラスチックの種類を明らかにするため、3カ国の研究地点でそれぞれ複数回の現場実験を行った。実験後は、プラスチックの種類別に遺伝子解析と共焦点蛍光顕微鏡による解析が行われ、有害微生物のマイクロマッピングを実施した。 目的(3)では、インターモンスーン期、南西モンスーン期、北東モンスーン期においてマレーシアで2回、シンガポールで1回、総合共同調査を計画通り実施した。特にシンガポールでは月例調査を実施し、高頻度でのサンプル取得に努めた。その結果、東南アジアでのプラスチックとそれに付着する有害微生物の季節性は既に確認済みであり、その解析は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は当初の計画以上に研究の進展があった。 目的(1)潮間帯に漂着・散乱するプラスチックデブリの現存量をリモートセンシング(ドローン)により定量化することが、以下の行程を経て達成された。決定された観測地点(シンガポール・マレーシア)において、ドローンと5-mの自撮り棒を使って、プラスチック分布を推定するための画像を撮影した。マシンラーニングによる画像解析の充実化に向け、データーベース発展させ(多次元、1-5K画素)、シングルショットディテクター(SSD)を開発した。SSD法を使用し、識別可能なプラスチックの形状、種類、推定精度を評価した。
目的(2)プラスチックデブリに付着した微生物群集とくに有害種を遺伝子工学的手法により定量化することが、以下の行程を経て達成された。プラスチックデブリにヒッチハイキングする有害微生物を回収する方法を確定した。有害微生物の遺伝子サンプルの定量化手法(MinION、リアルタイムDNAシーケンサー)を検討・改善し、最適なプロトコルを確定した。有害微生物が付着するプラスチックの種類(PE、PP、PS、PET、PVC)を明らかにするため、3カ国の研究地点(日本・シンガポール・マレーシア)でそれぞれ複数回の現場実験を行った。現場実験のサンプルを共焦点蛍光顕微鏡(三次元)により観察し、有害微生物のマイクロマッピング(バイオフィルムの厚さを立体的に定量化)を実施した。
目的(3)モンスーン周期と関連したその季節的動態を明らかにすることが、以下の行程を経て達成された。シンガポールでは月例調査を実施した。インターモンスーン期、南西モンスーン期、北東モンスーン期においてマレーシアで2回、シンガポールで1回、総合共同調査を計画通り実施した。東南アジアでのプラスチックとそれに付着する有害微生物の季節性を確認し、現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、本研究の最終的な完遂に向けて、以下の項目を実施する。
現場実験のサンプルの解析(遺伝子、共焦点蛍光顕微鏡)を行う。マシンラーニングのデーターベースを発展させ、画像解析の精度を向上させる。東南アジアでのプラスチックとそれに付着する有害微生物の季節性および時系列的な変動性を解析する。有害微生物の多様性を解析する。追加の現場調査を行い、共同研究先と研究協定を締結する。研究成果を取りまとめ学術論文として投稿する。本研究を発展させた新しい研究費を申請する。
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