研究課題/領域番号 |
21KK0210
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村上 宏昭 筑波大学, 人文社会系, 助教 (70706952)
|
研究期間 (年度) |
2022 – 2024
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
12,870千円 (直接経費: 9,900千円、間接経費: 2,970千円)
|
キーワード | グローバルヒストリー / パスポート |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、西洋近代で形づくられた複数の身体類型に焦点を当て、身体史研究に新たな光を投じることを目的としている。特に近代の旅券制度には、その発展の歴史のなかで可述的身体(言語で表象可能な身体)、可視的身体(視覚で認識可能な身体)、可読的身体(数値で解読可能な身体)という、少なくとも三つの類型が認められる。そこで本研究は旅券制度を軸にしながら、これらの身体の歴史的諸相や機能を詳らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究は、近代西洋の三つの身体類型を旅券制度の推移を手掛かりに追跡しようとするものである。この目的に即して、本年度はベルリン自由大学に招聘研究員として在籍し、旅券制度発達の歴史的文脈である近代的グローバリゼーションの理論的知見を習得しようと試みた。いうまでもなく旅券制度は元来、市民の国家間移動を管理するツールとしてフランス革命以来発展してきたものである。それゆえ西洋社会でそうした国境横断的な移動が規模を大きくするにつれて、旅券制度の重要性も増していったはずである。そこで本研究では、19-20世紀を通じて行われたトランスナショナルな移動の諸相(出稼ぎ移民、漂泊民、グランドツアー、ツーリズム等々)をできるだけ広く目配りし、近代的な国家間移動をグローバル・ヒストリーの視点から把握することを試みた。 以上のような理論的視座の習得と並行して実証研究のための準備作業も進め、旅券写真においてベルティヨン法が応用されるまでのプロセスの解明を試みた。具体的には、まず犯罪学関連の専門雑誌からベルティヨン法に関する論文を抽出し、ドイツにおけるその受容の諸様態を分析した。次に個人識別の問題をめぐる当時の諸議論を整理し、効率的な識別法に関する同時代の研究論文を調査した。それらの成果を踏まえつつ、次年度では旅券が個人識別のツールとなる中で、いかに犯罪者特定のノウハウが旅券写真へと応用されていったのか、それをめぐってどのような議論が戦わされたのか、について調査を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初はなおCOVID-19による規制が強く残っていたことから、当初1年間の予定であったベルリン自由大学での在籍を急遽7か月に短縮し、9月から3月までとした。その結果、ドイツ滞在期間中に予定していた研究計画も変更を余儀なくされ、史料調査も当初の想定より遅延している。そのため今夏(2023年度)にドイツに再渡航し、滞在可能期間内で調査を再開する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
上記のように本年度はドイツ滞在期間を短縮したことから、残りの滞在可能期間の範囲内でドイツに再渡航し、本研究を続行する。
|