研究課題/領域番号 |
21KK0215
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中谷 惣 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 准教授 (10623390)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 外国人 / 高利貸し / イタリア都市 / 信用ネットワーク / 信用取引 / イタリア中世 |
研究開始時の研究の概要 |
基課題は、ヨーロッパ中世都市において、市民と非市民のはざまにいた外国人ら周縁者の権利の享受とはく奪を都市国家の政策から明らかにし、中世都市の市民概念の実相に迫るものである。本国際共同研究は、外国人の信用ネットワークを市民的存在となるために利用しえた社会的な資源、権利と捉え、その構造と特質を信用取引から実証的に解明する。市民的存在たるための社会的な側面に光を当てることで、中世都市の市民概念を多面的に把握することを目指す。グローバル化や経済格差の拡大に直面する現代において、外国人ら周縁者の社会的信用ネットワークに注目した市民概念の実証研究は、今日の市民のあり方を再考する上でも示唆に富むものとなる。
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研究実績の概要 |
基課題は、中世イタリア都市の市民概念を、市民の輪郭部に位置した周縁者(外国人、高利貸し、追放者)に焦点を絞り、彼らがどのように諸権利を享受し、また剥奪されたのかに注目して動態的に解明するものである。本国際共同研究は、基課題を進める中で発見した外国人(他都市出身者)の信用ネットワークを、彼らが市民的存在となるために利用しえた社会的な資源、権利と捉え、この信用ネットワークの構造と特質を、公証人文書裁判記録等に収められた信用取引に関する共同調査を通して実証的に解明することを目指す。 本年度は昨年度に引き続き、ルッカ、プラート、フィエーゾレ、ピストイア、アレッツォの国立文書館および司教座附属文書館においてカリアリ大学のタンツィーニ教授やピサ大学のデル・プンタ博士らと情報共有しながら資料調査を実施した。その中で、14世紀後半のルッカの公証人文書から、ルッカの有力市民が多額の資金をピストイア人特に質屋を営む金融業者に融通していた事実が明らかになった。これは高利での金貸しがキリスト教の教義上、また社会通念上、禁じられていた社会において、地元の有力者にとっては自身の名誉を傷つけずに利益を得る手段として、外国人にとっては有力者と結びつきを強め経済活動を進める手段として有効であったと考えられる。他方、教会裁判所では外国人を高利貸しの罪で罰する事例も複数確認され、これを基に彼らの現地社会への統合と排除の実態を解明する必要性が浮かび上がった。 なおこの成果は7月にイギリス・リーズで開催された国際中世学会、および9月のオーストラリア・モナッシュ大学主催の中世・ルネサンス研究セミナーにおいて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度前半にイタリアに滞在し、トスカーナ各地の国立文書館および司教座附属文書館で史料調査を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はイタリアに渡航し、ルッカを中心とするトスカーナの文書館での史料調査を引き続き行うとともに、外国人の公証人文書が現存しているローマ国立文書館での調査を実施する。
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