研究課題/領域番号 |
21KK0227
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分10030:臨床心理学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岡田 智 北海道大学, 教育学研究院, 准教授 (10458862)
|
研究期間 (年度) |
2022 – 2024
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
|
キーワード | 自閉症スペクトラム特性 / メンタルヘルス / カモフラージュ / アセスメント / 国際比較 / イギリス人 / インド人 / 日本人 / 発達障害特性 / 包括的アセスメント / 自閉症 / 知能検査 / 発達アセスメント / 発達支援 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで発達障害のある子どもへの知能検査を主軸とした包括的アセスメントモデルの信頼性と妥当性を検証し,エビデンスを基にした臨床解釈システムの構築に取り組んできた。一方,就学前幼児の認知発達と発達障害特性の状態が,どの程度,就学後の適応を予測するのかは解明されておらず,評価ツール自体の長期的安定性と共に,その予測的妥当性の検証が課題となっている。本課題では,自閉症研究で歴史のある英国で,現地研究者とこれまでの研究成果を基にした研究交流と,発達障害のある人のメンタルヘルスや社会適応を予測する影響因についての共同研究を行う。本研究課題は就学前幼児を対象としたコホート調査の基盤作りを行うものである。
|
研究実績の概要 |
2023年2~5月の期間は,Nottingham Trent University(NTU)にて,Dr.Iao 及び研究アシスタントRagin Maria John氏と協働で,自閉症スペクトラム(ASD)特性とメンタルヘルスや適応についての文献研究及びこれまでの自身らの研究知見の議論をおこなった(2月~5月)。また,これと並行して,同時に調査で用いるASD特性を測定するComprehensive Autism Trait Inventory(CATI)についても,オーストラリアの研究者Michael English氏及び心理学を専門とする大学教授・准教授,現場実践家らで構成する日本語版作成チームと日本版作成の議論し,2022年に収集したデータの分析を進めた。 5月には日本に一時帰国をし,自閉症スペクトラム特性及びメンタルヘルスに関する調査を実施し,日本人大学生データを2つの大学で収集した。 5月下旬にNTUに戻り,NTU及びインドの大学生へ,国際比較データを収集するため,調査計画を議論し,6月~9月の間に調査を実施した。データ収集と並行して,ASD特性とメンタルヘルスの関連,社会的カモフラージュの媒介効果についての文献レビューを行い,議論した。7月にはイタリアで行われたInternational School Psychology Association の大会に参加し,本研究の主軸となる調査で用いるCATI日本語版の信頼性と妥当性の検証に関する研究成果を発表した。 8月に帰国をし,それ以降はデータ分析及び分析結果の議論をIao氏,Johh氏とオンラインで重ね,論文作成に向けて動いている。2024年3月にはその内容を2024年のInternational School Psychology Association(ラトビアで開催)の国際学会で発表予定である。,
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVIDー19は落ち着いたものの,感染症リスクのためイギリスの教育・臨床現場への訪問・視察は断念せざるを得なかった。現地の臨床・教育現場でのアセスメントとプレイスメント(教育措置)や合理的配慮に関する資料を収集するのみとなった。 一方で,国際比較調査研究については受入研究者Iao氏,その協働研究者でもあるJohn氏(インド出身)との議論ができ,イギリス人データ以外に,インド人データも追加で収集することができた。アジア圏文化と西洋文化の比較が可能となった。 しかし,8月からNTUの研究室があるビルディングで改修工事が始まり,大学ファシリティや研究室が使用が難しくなったことと,共同研究者が夏休暇にはいったことにより,8月10日から一時帰国を余儀なくされた。在外研究期間は11月末までであったが,8月以降は共同研究者が夏休暇から戻った際にはオンラインで研究を進めていくこととなった。 本課題には,この国際共同研究をもとに発達障害特性・認知特性の発達軌跡・縦断的変化に関する研究を発展していく目的もあるが,国際的に用いられるアセスメント尺度のいくつかの日本語版作成も渡航期間及び一時帰国期間に手掛け,縦断調査及び臨床アセスメントへの適用可能性を検討することができた。 総合的に見て,現場視察はできなかったが,本研究課題の中核となる研究調査については十分に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年7月にラトビアのInternational School Psychology Association の国際学会で,日本・イギリス・インドの国際比較研究を発表する予定であり,その準備をIao氏,John氏とオンラインで進めている。 また,2024年度中に,NTUへの短期間の滞在も計画しており,国際誌に研究成果を投稿する準備をする予定である。 新たに日本語版を手掛けた尺度にAutism Symptom Demension Questionare(ASDQ)があり,これを原著者とも協働で日本語版の英語版との等質性の検討,心理統計特性の検討等を行っていき,認知特性・発達障害特性の発達軌跡・長期安定性に関する研究で用いられるようにする。
|