研究課題/領域番号 |
21KK0232
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分59010:リハビリテーション科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山崎スコウ 竜二 大阪大学, 先導的学際研究機構, 招へい准教授 (10623746)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | 高齢者ケア / 対話ロボット / 大規模言語モデル / ELSA/ELSI / 評価モデル / 現象学 / 社会調査 / 価値と言語・制度・文化的多様性 / ケア / ロボット / 対話 / 倫理 / 認知症ケア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、認知機能の低下を伴う高齢者ならびに健常高齢者に対し、ロボットによって対話を促し、異文化圏における効果の検証を行うとともに、ロボットの受容性とケアの文化に関する調査と理論的検討を行い、かつロボットの適用に伴う倫理的課題を検討することを目的とし、メディア論としてのケアの人間学の領域開拓に資することを目指す。高齢者宅等でロボットとの対話実験を持続的に行い、併せて効果検証に必要なデータ収集のため、質問紙調査とインタビューを実施し、経過や対人、異文化間等で比較分析する。ロボットは話し方、発話内容等を適宜調整しながら、高齢者に対するロボットの多面的効果と、特に効果的な対話方式を明らかにする。
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研究実績の概要 |
高齢者を対象としたソーシャルロボットの異文化圏における効果と倫理的課題の検討を目的とした本研究は、2023年度にイスラエルおよびデンマークで実証実験の準備を進めた。イスラエルはHadassah Academic CollegeよりKeren Mazuz准教授を日本に招へいし、ロボットの扱い方の教示やヘブライ語での対話を含む開発方針、実験デザイン等の協議を行った。また多民族社会の構成を背景にイスラエルではデイサービスにおけるロボットを用いた高齢者のグループセッションの試行を始め、加えて介護スタッフの多言語コンフリクトの課題を含む検討を開始した。さらにデンマークはAarhus University - Faculty of Arts, School of Culture and Society, Philosophyに研究代表者が自ら研究滞在し、Johanna Seibt教授を代表とする Research Unit for Robophilosophy and Integrative Social Robotics (RISR) に籍を置いて研究ユニットメンバーらと議論および実験準備を行った。研究推進のため、高齢者宅で行う実験参加者のリクルートに係る事項について福祉と技術に通じる人類学者と打ち合わせ、また実験プロトコル、倫理審査に関して心理学者、大規模言語モデルを用いた実験および情報の扱いに関する倫理的側面や価値に関することなどを哲学者と議論し、ロボットのデモンストレーションも行いながら意見交換や調整を行った。研究の展開について脳科学者や認知科学者との議論も進め、さらに実験機材の調達や情報環境のルールや整備に関して大学のIT部門との調整も実施し、大学の事務方とも実験実施に係るGDPRや大学の取り決めに関連した手続きの調整も進めた。機材の準備では、各種機材を現地で選定、購入し揃えてセッティング、テストを繰り返し、サーバの設置、インターネットを介した機器の制御等を進め、今回の渡航で予定していた実験準備の目的を達することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イスラエル・パレスチナ紛争の影響により、イスラエルの社会や人々の状況が不安定化し、実験に係る研究の一部を中断したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今回の渡航では、研究交流や実験協力の依頼のため、デンマーク国内の様々な教育機関、研究施設、行政等も訪れて意見交換を行った。オーフス大学ではRISRの他、CAVIやBusiness Schoolのスタッフと意見交換し、学外では国立介護士養成機関SOSU Nordや看護師、社会福祉士等の養成を担うVIA University Collegeを訪れVRやAI、各種技術を病院等に導入し教育にも活用する現状や課題について聞き取りを行った。オーフスは行政による常設の福祉機器展示場Dokkも訪れて現地の取り組みを視察した。ロボット技術等の社会とのハブ機能を持つDTI、大学ではSDU、RUC、IT-Universityでの研究開発や教育の現状も聞き取りを行って意見交換し、協働のための関係性を築くことができた。行政ではコペンハーゲンの自治体職員に福祉機器の社会実装およびVTV-modelを用いた評価の現状を聞き取り、改訂された評価モデルに関しても意見交換を行い、今後の相互交流への展開可能性を議論した。行政とも協働し、多様なステークホルダーとの橋渡しを行うTechno-anthropologistが担う役割の意義と重要性が明らかになった。さらにDanish National Ethical Committeeに所属したメンバーともロボットの社会技術、倫理に関する議論を行った。上記の成果を基に、今後は主に本年9月以降のデンマークでの実験開始に向けて、日本から遠隔での機器の操作準備や準備、ロボットの対話プログラムの調整、実験プロトコル、倫理審査、リサーチアシスタント雇用等の手続きを継続して研究を進める予定である。派生して国際会議でのシンポジウム開催等を含めさらに多様な議論の場も設け、国際共同研究の成果を新たな授業科目開設で国内の教育にも反映させる取り組みにつなげる。なお、イスラエルの紛争のように昨今の国際情勢の急速な変化が研究に及ぼす影響を考慮し、状況に合わせて現地での研究の規模や形態、期間、実施場所を調整して対応する。
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