研究課題/領域番号 |
21KK0244
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
池野 なつ美 鳥取大学, 農学部, 講師 (30756086)
|
研究期間 (年度) |
2022 – 2023
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
|
キーワード | 核物質の状態方程式 / 重イオン衝突 / 輸送模型 / π中間子 / Δ共鳴 / 対称エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
高密度核物質を実現できる重イオン衝突に着目し、高密度領域の核物質の状態方程式(EOS)の情報を引き出すことが目的である。重イオン衝突実験からEOSの情報を引き出すためには、核子多体系の微視的な時間発展理論(輸送模型)を通して研究され、輸送模型の不定性によりEOSの導出に限界が生じるため、輸送模型の高精度化は必須である。テキサスA&M大学のグループと共同研究を行い、重イオン衝突でのπ中間子生成の実験値を再現可能な輸送模型へと発展させる。信頼性の高い輸送模型への拡張・高精度化を行うことで、EOSの高精度な情報の抽出が可能になる。
|
研究実績の概要 |
本研究では、高密度核物質を実現できる重イオン衝突に着目し、高密度領域の核物質の状態方程式(EOS)の情報を引き出すことが目的である。重イオン衝突実験からEOSの情報を引き出すためには、核子多体系の微視的な時間発展理論(輸送模型)を通して研究され、輸送模型の不定性によりEOSの導出に限界が生じるため、輸送模型の高精度化は必須である。これまでの研究では、反対称化分子動力学(AMD) 法と微視的輸送模型(JAM) を連動させたAMD+JAM輸送模型を用いていたが、最近報告されたSn+Snの重イオン衝突実験の荷電π中間子生成データを十分に再現できなかった。その原因はπ中間子やΔ共鳴の核媒質中での相互作用の影響であると考え、反応の二体衝突過程(NN → NΔ等) の始状態と終状態でのΔ共鳴等のポテンシャルの影響を正しく取り入れるように模型(AMD+sJAM)を改善することでデータを再現できるようになってきた。特に、核子のポテンシャルの運動量依存性が、二核子の衝突から生じるΔ共鳴生成(NN → NΔ)に強い影響を及ぼすことが分かってきた。さらにΔ共鳴から生じるπ中間子生成(Δ→ Nπ)にも、非対称核物質中での核子のポテンシャルの運動量依存性(中性子や陽子の有効質量)の情報を強く反映することが明らかになった。一方で、高密度対称エネルギーの効果は、核子のポテンシャルの運動量依存性の効果よりも小さいこともわかってきた。この結果については、現在論文を執筆中である。次に、π中間子のポテンシャルの効果を重イオン衝突の輸送模型に取り入れる方針の議論は既に行っており、現在輸送模型の改良を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
重イオン衝突反応の計算に用いる適切なπ中間子のポテンシャルを検討することに時間を要している。また、陽子・中性子のポテンシャルの運動量依存性の効果が、π中間子生成に大きな影響を与えることが分かってきたが、この結果を論文にまとめることも時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
AMD+sJAM輸送模型にπ中間子のポテンシャルの効果を取り入れ、重イオン衝突反応の計算を行い、π中間子のポテンシャルのよる荷電π中間子生成の影響を調べる。既存のπ中間子生成の実験データと比較し、対称エネルギーに関する情報が引き出せるか考察する。次期実験に対応した重イオン衝突の計算を行う。また、深く束縛されたπ中間子原子の研究で得られた知見を用いて、重イオン衝突反応における核媒質中π中間子の性質変化についても調べる。
|