研究課題/領域番号 |
21KK0260
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分21050:電気電子材料工学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池之上 卓己 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00633538)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2023
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | ミストCVD法 / 岩塩構造ワイドギャップ酸化物 / 酸化物半導体 / NiMgO / 岩塩構造 |
研究開始時の研究の概要 |
SiC (Eg: 3.3 eV) や GaN (Eg: 3.4 eV) を超える性能のデバイス実現を見据えて、より大きなバンドギャップを有するNiO-MgO-ZnO 系によるデバイスを目指す。成膜プロセスとしては、高品質な酸化物の成長と低環境負荷・高生産性を両立できるミスト CVD 法を用いる。デバイス応用に資する NiMgO、MgZnO 単結晶薄膜の成長技術が確立できたことから、最終段階となる、パワーデバイスの実現を国際共同研究により実現する。デバイスプロセスまで一貫して行える環境で結晶成長を行う共同研究により、最終的には高耐圧を有するトランジスタを実現する。
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研究実績の概要 |
到着後、ただちにミストCVD法の成膜環境を整備した。これまでに報告した、NiOやNiMgOの成膜を高品質に行えることを確認した。 本研究課題では、MgO基板と格子整合する岩塩構造のNi0-MgO-ZnO系に注目している。Ni0-MgO-ZnOの組成を適切に制御することで、MgO基板と格子整合したまま、バンドギャップを拡大できることを示した。このような研究はワイドギャップ半導体の中でも独創的なものである。 NiOは希少なp型伝導性を示す酸化物半導体である。さらに、MgOとの混晶とすることで、バンドギャップを拡大できる。ただ、このNiMgOは未知の特性も多いため、Mg組成を制御したNiMgOについての詳細な評価を行っている。通常、NiOはスパッタリング法を用いてNi空孔によりキャリア濃度制御が行われることが多いが、ミストCVD法の特長を活かしたLiドーピングによるNiMgOの評価も併せて行っている。 さらに、ワイドギャップ酸化物として有望とされるβ-Ga2O3とのデバイスについても検討している。まずは、β-Ga2O3基板上にミストCVD法で成長させたNiMgOとのヘテロ接合について評価を行った。また、MgO基板上にβ-Ga2O3をミストCVD法で成長させる技術を確立した。これにより、MgO基板上にNiOまたはNiMgOを形成した後にβ-Ga2O3を成長させるデバイスプロセスも可能になることが見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに、ミストCVD装置を立ち上げ、成膜を行える段階まで達した。この装置で、NiOやNi0-MgO-ZnOだけでなく、β-Ga2O3を成長できることを確認した。LiやSiを用いたドーピングについても、制御性高く実施できることが分かっている。 この装置を用いて、MgO基板と格子整合する岩塩構造のNi0-MgO-ZnOを成長させた。Mg組成によって、MgO基板と格子整合したままバンドギャップを拡大できることを示した。 同様にNiMgOも成長させた。NiMgOについては、様々な濃度にLiをドーピングした試料を成長さて、NiMgOについての詳細な評価を行っていた。 さらに、β-Ga2O3とのデバイスを見据えて、MgO基板上にβ-Ga2O3をミストCVD法で成長させる技術を確立した。このβ-Ga2O3は他の方法で成膜したものと比べて、様々な特徴があることが分かってきており、評価を完了させ次第、デバイス化を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、β-Ga2O3とNiOおよびNiMgOとのヘテロ接合の評価を完了させて、β-Ga2O3とNiMgOを用いたデバイスを試作する。初めに、β-Ga2O3基板上にβ-Ga2O3を成長させ、その後NiMgOを成長させることでヘテロ接合を形成する。その際、β-Ga2O3はMOCVD法で成長させたものと、ミストCVD法で成長させたものを利用することを検討している。加えて、MgO基板上にNiMgOを先に成長させ、その後β-Ga2O3をミストCVD法で成長させる構造のデバイスも検討する。 次に、Ni0-MgO-ZnOを用いたホモ接合について、検討する。このNi0-MgO-ZnOは、新しい材料でもあるので、物性評価を行いつつ、デバイス化の可能性を探索する。 また、近年では、GaNベースのデバイスにおいても、p型のNiOが利用される例がみられる。このような応用についても、最新情報を調査しながら必要に応じて取り組む予定である。
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