研究課題/領域番号 |
21KK0267
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 神奈川大学 (2022) 明治学院大学 (2021) |
研究代表者 |
安部 淳 神奈川大学, 付置研究所, 研究員 (70570076)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
13,130千円 (直接経費: 10,100千円、間接経費: 3,030千円)
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キーワード | 性比調節 / 寄生バチ / Melittobia / 分散 / 協力行動 / 社会行動 / 種間比較 / 性比 / 協力 / 血縁選択 |
研究開始時の研究の概要 |
生物は自己の利益を追求し利己的に振る舞うことがある反面、お互いの利益を高めるように協力的に振る舞う場合がある。一般に、遺伝子を共有する血縁個体どうしは協力的な行動を示しやすいことが知られている。本研究は、個体どうしが血縁認識をしない場合でも、分散が弱く血縁個体どうしが遭遇しやすい状況では協力的な行動が進化しやすいのかについて検討する。野外調査を行い、寄生バチMelittobiaの仲間の複数の種および個体群を採集する。DNA解析を行い、それぞれの種や個体群における分散の強さを推定し、そこで進化した性比と分散との関係を解析することにより、協力行動との関係について検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、寄生バチMelittobiaの分散様式による性比調節を対象に、分散の程度と協力行動の進化の関係を明らかにすることを目的とする。Melittobiaの雌は、近隣に分散すると血縁のある雌と一緒に産卵することになるため、協力的に雌に偏った性比で産み、遠方に分散した場合は、非血縁者の産んだ血縁関係のない雄との競争に備えて雄を多く産むことが、我々の最近の研究から明らかになっている。 9, 10月にイギリスのオックスフォード大学に渡航し、共同研究者と理論的な検討を行った。そこでは、今後の課題として、(1)Melittobiaの性比は分散様式による性比調節を仮定した理論モデルの予測よりもさらに雌に偏ること、(2)近隣に分散した雌間の血縁度が異様に高いこと、(3)稀に雄ばかりを産む雌が存在すること、などが挙げられた。これらを理論的に説明できるか検討するために、近隣に分散した雌と遠方に分散した雌の間で一緒に産卵する雌親の数が異なる場合について、日本の共同研究所と共に新たな理論モデルを構築している。 2, 3月には、アメリカのケンタッキー州、ジョージア州、フロリダ州、サウスキャロライナ州に渡航し、共同研究者と共にMelittobiaが寄生したホストを採集した。これまでのところ、M. megachilisとM. australicaを確認している。これらは日本に持ち帰り、室内で飼育している。羽化させて、各ホストで育った個体の性比を測定し、その後DNAマーカーを用いて血縁構造を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりイギリスでは理論的な検討が行え、アメリカでは野外調査を行えた。アメリカでは各調査地で十分な量のMelittobiaを採集することができた。Melittobiaが寄生したホストは、これまで日本では9年間掛けて29しか採集できなかったが、アメリカでは今回の調査だけで100以上を確保することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今回採集したサンプルを羽化させて性比を測定し、DNAを解析する。 さらに、アメリカでの野外調査を再び行い、サンプルを追加する。Melittobiaの分散様式にともなう性比調節を規定する要因が明らかになっておらず、なるべく多様な環境においてMelittobiaを採集する必要がある。前回は越冬世代のサンプルを得たが、次回は夏に調査を行い異なる世代を採集する。さらに、アメリカ南西部だけでなく、ニューイングランド地方にも調査地を拡大する。
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