研究課題/領域番号 |
21KK0270
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
安部 真人 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (30543425)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
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キーワード | オキシリピン / プロスタグランジン / SPM Precursor / 酵素反応 / カスケード / 化学合成 / 過酸化リン脂質 / 酵素カスケード反応 / 脂質メディエーター |
研究開始時の研究の概要 |
生化学カスケードで産生する過酸化脂質と誘導脂質を併せてオキシリピン類と総称する。オキシリピン類は抗炎症や抗血栓等の強力な生理活性を持つものの、生理条件下で不安定であり、化学構造が未同定の化合物が多く残されている。本研究ではオキシリピン類全般を対象とした効率的な合成法を確立し、新たな創薬シーズを導出することを目的とする。このために、オキシリピン類を対象とした複数の酵素による前例のないカスケード反応の開発を遂行する。このためには、世界的なカスケード反応の専門家の協力が必須である。この課題をUCLのHailes教授のもとで、脂質合成を専門とする応募者が共同開発することで克服する。
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研究実績の概要 |
オキシリピン類は、アラキドン酸カスケードに代表される高度不飽和脂肪酸の代謝によって生合成される。これらの中には、プロスタグランジン類などのような強力な炎症メディエーターやSPMとして知られる抗炎症性脂質代謝前駆体などの医薬シーズが含まれる。本研究では、脂質の化学合成を専門とする代表者と酵素多段階合成を専門とするUCLのHailse教授の国際共同研究によって、人工的なカスケード反応を確立することでオキシリピン類を効率的に合成することを目指している。これまでに、人工的な酵素合成によってDHAを原料とした15-S-HEPEの合成を確立した。また、リン脂質のままで酸化等を受けて脂質メディエーターとなるオキシリピン類も視野に入れ、高度不飽和脂肪酸を結合させた各種リン脂質の合成も遂行した。具体的にはホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリンなどで成功例を見出した。さらに、ホスファチジルグリセロールについては過酸化脂質を選択的に側鎖部に有する類縁体の合成にも初めて成功した。これらの成果は、さらに研究計画の最終年度に向けてそれぞれあるいは組み合わせてオキシリピン類の合成に応用することができ、多様な標的に対する合成の選択肢を得ることに繋がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画において重要となる化学合成と酵素合成の融合という視点から、15-S-HEPEの効率的な合成を確立した点で順調な進捗が得られていると考えられる。また、人工的な酵素合成を展開するための準備としてシクロオキシゲナーゼ(COX)の無細胞系発現と精製についても準備が完了し、想定以上の進捗を得ることができた。一方で、リン脂質への過酸化脂肪酸の導入については、最終的に目標を達成したものの当初予定よりも時間を要する結果となった。ただし、この過程でリン脂質の立体選択的な全合成を完成させることに成功しており、レベルの高い合成方法として確立できた点は評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
オキシリピン類の人工カスケード反応による合成法の確立にむけて、精製COXを用いた合成実験に着手する。一方で、これまでに得られたオキシリピン類やそれらの前駆体である高度不飽和脂肪酸結合型のリン脂質についても多様な生理機能が期待されているため、これらの機能解析を並行して実施する予定である。 以上の推進方針に従って今後の研究を進めることで、研究目標である抗炎症性あるいは抗血栓性のオキシリピン類の導出や効率的な合成方法の確立を達成する。
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