研究課題/領域番号 |
21KK0297
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52050:胎児医学および小児成育学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
宮内 彰彦 自治医科大学, 医学部, 講師 (50570397)
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研究期間 (年度) |
2022 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
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キーワード | micro RNA / Rett症候群 / MECP2重複症候群 / miR-302 / MECP2 / 遺伝子治療 / 脳オルガノイド / miRNA / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
本研究のテーマは、病因遺伝子の機能喪失でRett症候群を発症し、過剰に発現してもMECP2重複症候群を発症するような遺伝子発現量が規定されている疾患で、いかに遺伝子発現量を調節し、AAVベクターを用いた遺伝子治療を開発するかという点である 。その解決方法として、micro RNA(miRNA)を用いた発現制御の方法に焦点を当て、Rett症候群/MECP2重複症候群の遺伝子治療を開発する。miRNAは、様々な蛋白をコードするRNAの分解や翻訳を制御する機能があり、発現制御を要する難治疾患の新規治療法として有望である。
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研究実績の概要 |
本研究は、病因遺伝子の機能喪失でRett症候群を発症し、過剰に発現してもMECP2重複症候群を発症する、遺伝子発現量が規定されている疾患でいかに遺伝子発現量を調節しAAVベクターを用いた遺伝子治療を開発するかという点が課題である。その解決方法として、micro RNA(miRNA)を用いた発現制御の方法に焦点を当て、遺伝子治療を開発することを目標としている。miRNAは様々な蛋白をコードするRNAの分解や翻訳を制御する機能があり、発現制御を要する難治疾患の新規治療法として有望である。本年度までに、MECP2重複症候群のモデルマウスであるMECP2-Tgマウスの初代ニューロンを使用し、MECP2を抑制するmiRNAを探索し、miR302を含むいくつかの候補を得た。申請者は、神経形成の分野のmiRNAを専門とするBalor College of Medicineの海外共同研究者、Ronald Parchem博士の所属する研究室にて、同研究室で実績をあげているmiR302を中心としたmiRNAに関する指導を受けている。miR302は神経発生に大きく関与するmiRNAで、ノックアウト(KO)では神経管の閉鎖が障害され胎児致死となり、ヘテロ接合性欠損では生存可能ながら水頭症を来すなど発現量に依存して神経発生に与える影響が変わる。多数のmRNAの翻訳調節に関わるため、発現調節により起こるMECP2以外の遺伝子への影響も無視できないと考えられ、miR302KOマウス、miR302関連プラスミドを用いた神経発生や癌細胞における関連分子への影響について研究を行い、miRNAに関する技術を学んでいる。また、同時に患者iPS細胞由来神経細胞を用いたオルガノイドによる中枢神経の治療評価系の構築やMECP2-TgマウスへのmiRNA模倣体を組み込んだAAVベクターの効果検討についても継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
micro RNA(miRNA)に関しては、MECP2をターゲットとするmiR302が、MECP2だけでなく他のどの遺伝子をターゲットとするのか、どのようなOff Target効果が懸念されるかなど、miR302をMECP2遺伝子の発現調節に用いた場合の影響を検討するため、miR302ノックアウトマウスの神経発生におけるメカニズムを検討したり、miR302をノックアウトあるいは過剰発現させた場合の関連分子の動きやメカニズムの検索を行っている。他にもES細胞やiPS細胞の神経細胞への分化、miR302と連動して機能していることが予測されるmiR290やLet-7など数種類の神経発生に関わるmiRNAの研究にも関与し、Ronald Parchem博士の研究室にて習熟した研究者から指導を受けている。脳オルガノイドの作成については、iPS細胞を用いた作成には成功し、患者iPS細胞を用いた検討に取り掛かっているが、再現性のある結果を得るため検討を重ねている。また、既にMeCP2欠損マウス(Rett症候群モデルマウス)の大槽にニューロン特異的SynIプロモーター下で正常なMECP2を発現する改良型AAV9型ベクターの投与を行っており、MECP2タンパク質の広範な発現を確認するとともに、生存延長や行動障害の改善など表現型の改善が得られている。今後も生存解析や表現型の評価を継続していくとともに、MECP2-TgマウスにおけるmiRNA模倣体を組み込んだAAVベクターの効果を調べていくなど予定をしており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通りMECP2重複症候群のモデルマウスであるMECP2-Tgマウスの初代ニューロンを使用し、MECP2を抑制するmiRNAの探索によりmiR302を含むいくつかの候補miRNAを得た。現在、MECP2-Tgマウスに対して、miRNA模倣体を組み込んだAAVベクターの投与を計画しており、申請者は2024年度内に帰国予定であるため、今後はMECP2-TgマウスでのmiRNA模倣体投与後の生存解析や表現型への影響を調べ、miRNAによる遺伝子発現調節機構を用いた治療法の確立に向けて検討を行っていく。同時に、miR302を用いてMECP2を発現調節する際にどのようなOff Target効果が懸念されるかについては、引き続きmiR302ノックアウトマウスの表現型とその背景にある分子メカニズムを探索し、MECP2-TgマウスへのmiRNA模倣体を組み込んだAAVベクター投与後の効果、表現型、分子レベルでの影響などの結果と合わせ、既存のmiRNAがMECP2および関連分子に与える影響を調べていく。結果に応じて、MECP2重複症候群を対象とした遺伝子特異的なmiRNAを設計することも検討しつつ、MECP2遺伝子の発現抑制から調節方法の開発を試みる。Rett症候群に関しては、モデルウスであるMecp2欠損マウスへの遺伝子導入により、表現型の改善を確認できており、引き続き生存解析や表現型の解析を行っていく。また、患者iPS細胞由来神経細胞を用いた脳オルガノイドの作成についても、miR302をはじめとするmiRNAを利用した重複抑制に関しての中枢神経の治療評価系の構築を目標として、引き続きMECP2重複症候群患者由来のiPS細胞を用いて、再現性を保持した脳オルガノイドの作成の検討を継続していく。
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