研究課題/領域番号 |
21KK0298
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分53020:循環器内科学関連
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
齋藤 恒徳 日本医科大学, 医学部, 助教 (00716631)
|
研究期間 (年度) |
2022 – 2024
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
|
キーワード | オートファジー / マイトファジー / プレセニリン2 / ミトコンドリア / パーキン / PINK1 / PARL / 心筋細胞 / 拡張型心筋症 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代シーケンサーを用いた拡張型心筋症患者の網羅的遺伝子検索で多彩な遺伝子変異を認めた。その一つのPSEN2変異は若年性アルツハイマー病の原因遺伝子変異でもある。申請者はPSEN2の産物蛋白であるプレセニリン2を解析し、① プレセニリン2はマイトファジーを支配する蛋白パーキンの細胞内輸送を司る、② プレセニリン2は構造の類似したプレセニリン1と相補的に働きマイトファジーを調節していることを見出した。ミトコンドリア制御へのプレセニリンの役割を明らかにし、ミトコンドリア制御不全による心筋細胞障害の発生機序を解明する。ミトコンドリア制御系を標的としたDCMの新規治療法の開発に寄与する。
|
研究実績の概要 |
申請者はこれまでにプレセニリン2(PS2)はマイトファジー活性化によりミトコンドリアの恒常性を維持していることを明らかにした。PS2の機能解析の過程で、構造の類似したプレセニリン1(PS1)と相補的に働くことでマイトファジーを制御していると考えられたため、その相互作用の解明を目的として研究計画を立案した。 (1) ミトコンドリア膜電位測定およびミトコンドリア内膜電位を反映する膜蛋白Opa1の同位体を調べ、siPS2-H9c2は膜電位非依存的にマイトファジーを阻害していると考えられた。(2) 電子顕微鏡を用い、siPS2-H9c2およびsiPS1-H9c2の超微形態を観察した結果、siPS2-H9c2ではミトコンドリア断片化が示唆された。そこでミトコンドリアDNAに関連する転写因子TFAMおよびnrf1, nrf2のmRNA発現を測定したが、否定的であった。(3) 健常ミトコンドリアでは外膜でPINK1が切断される。siPS2-H9c2ではPINK1切断が抑制されていた。通常のマイトファジー反応では膜電位低下時にPINK1は切断されず、その結果ユビキチンのリン酸化が起きる。一方で、siPS2-H9c2ではPINK1切断が抑制されるのにユビキチンはリン酸化されない。申請者はこの差異について、ミトコンドリアにおけるPINK1切断に関与する因子が重要であると考えた。PINK1はミトコンドリア外膜のTOMM40受容体と内膜のTIMM23受容体に取り込まれ内膜蛋白PARLにより切断を受ける。PARLはPS2と共局在することが報告されているが詳細は不明である。申請者はsiPS2-H9c2およびsiPS1-H9c2におけるPARLのmRNA発現を調べた結果、siPS2-H9c2は他2者より有意に亢進しており、PARLが重要な役割を担っていると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
PS2とPS1は、マイトファジー制御に関しては相補的には機能していないことを解明し、PINK1切断におけるPS2の役割の解明が最重要課題であることを明らかにした。 昨年度はコロナ等の事情により長期の渡航が難しく、今後も予定は立っていない。しかしながら、11月4日から9日まで米国シカゴで行われたAmerican Heart Associationの年次総会の際に海外共同研究者であるRoberta A. Gottlieb教授と打ち合わせをする機会を作ることができた。Gottlieb教授とは毎週zoom meetingにより、得られた研究結果とそれに基づく次の実験計画について綿密に打ち合わせを行っており、国内での実験で海外渡航したのと同様あるいはそれ以上の結果が得られている。研究の進捗状況が良いため、追加でいくつかの実験をしたことで消耗品を購入することとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
プレセニリン2が膜電位非依存性にPINK1の分解に携わる機序の詳細を解明する。
|