研究概要 |
タンパク質に翻訳されずに機能するRNAは,ノンコーディングRNA (ncRNA)と呼ばれる。ここ10年程の間に,ncRNAが関与する生物現象の発見が相次ぎ,生物学の知見が新しいものに塗替えられつつある。なかでもリボスイッチは,低分子化合物との特異的結合によって遺伝子発現調節を行うユニークなncRNAで,抗生物質の新たな標的として,あるいは遺伝子発現を制御しうる技術開発に繋がる研究対象として,特に注目されているncRNAファミリーの1つである。 本研究では,新たな研究領域への新たな分析ツールの提供を目指し,『ノンコーディングRNA,特にリボスイッチを標的とする蛍光性の小分子(リガンド)を開発し,これらの化合物に基づくRNA解析法並びに薬剤ハイスループットスクリーニング法を開発する』ことを目的とする。また,リボスイッチの他,『ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTrans-activation responsive region (TAR RNA)や16SリボソームRNAAサイト』といった遺伝子発現調節に関わるRNAの非翻訳領域を標的とする蛍光性リガンド開発も併せて試みる。 本年度(平成22年4月~5月)は,ピラジン誘導体(蛍光極大波長:~400nm)が抗生物質とほぼ同等の結合親和力でTAR RNAと結合しうることを見出すとともに(K_d=770nM),蛍光性ナフチリジン誘導体(蛍光極大波長:~400nm)がアミノグリコシド類に匹敵する結合力でAサイトに結合することを見出した(K_d=530nM)。 現在,より詳細な相互作用解析を進めており,それらの知見に基づいて結合機能及び蛍光応答特性の改良をさらに行うことで,ncRNAの新しい分析ツールになることが期待できる。
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