研究課題
基盤研究(A)
本研究では鋳型非依存的RNA合成酵素群と翻訳因子と複合体を形成して機能する鋳型依存的RNA合成酵素群の構造一機能解析を行い、これらの酵素のRNA合成における基質特異性の分子基盤や翻訳因子のRNA合成の役割を明らかにすることを目的としている。本年度は、真正細菌由来のポリA付加酵素単体およびATPとの複合体のX線結晶構造解析を行った。ポリA付加酵素の活性触媒ドメイン、ヌクレオチド結合部位の構造はCCA付加酵素のそれと非常に似通っていたが、ヌクレオチド結合部位内のヌクレオチド認識に関わるアミノ酸の構造が異なっていた。ポリA付加酵素ではこれらのアミノ酸が、活性部位の他のアミノ酸と分子内水素結合を形成し、ヌクレオチド結合部位が固い構造をとっており、その結果、ヌクレオチド結合ポケットの形と大きさがATPのみに適したものになっており、保存されたふたつのアミノ酸のうちひとつのアミノ酸のみがヌクレオチドの塩基認識に用いられていた。ポリA付加酵素の、固いヌクレオチド結合ポケット構造の維持は、ヌクレオチド結合ドメインとRNA結合ドメインとの相互作用によることが示唆された。また、Qβレプリケースのコア複合体の複合体形成分子機構を解明するために、コア複合体のX線結晶構造解析を行い、構造を決定した。EF-Tu、EF-Tsはβサブユニットと疎水的相互作用し、コア複合体の中のβサブユニットの活性触媒コアの構造が維持されていた。生化学的解析から、EF-Tu、Tsとβサブユニットの相互作用は、コア複合体形成に必要であり、EF-Tu、Tsがシャペロン機能を有していることを明らかにした。鋳型RNA、合成されたRNA、付加されるヌクレオチドのコア複合体活性部位へのモデルから、コア複合体内のEF-Tuが、RNA合成のプロセッシブなRNA伸長反応を促進する"Modulator"としての、翻訳過程での役割を越えた、新たな機能を有する可能性を提示した。
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Structure
巻: 19 ページ: 232-243
Proc.Natl.Acad.Sci.USA
巻: 107 ページ: 15733-15738