研究課題
基盤研究(A)
本プロジェクトではRNAの質的な側面、特にRNAの転写後修飾に着目し、RNAが関与する遺伝子発現調節機構と高次生命現象の探索と解明を目的とする。A-to-IRNAエディティングは、二本鎖構造を形成したRNA中のアデノシン(A)が二本鎖特異的アデノシンデアミナーゼ(ADAR)の作用により脱アミノ化され、イノシン(I)へと修飾される機構である。その修飾酵素(ADAR1およびADAR2)は必須遺伝子であり、I修飾は、トランスクリプトームの複雑性の増大と、転写後の遺伝子調節に関与することが知られ、高次なレベルでの生命現象に深く関わっていると考えられる。また、I修飾の異常やADAR1の変異は様々な疾患を引き起こすことが知られている。我々は、ゲノムワイドにイノシン化部位を実験的に同定するため、イノシン特異的な化学修飾と逆転写PCR法を組み合わせた新規手法であるInosine Chemical Erasing(ICE)法を開発した。実際にICE法を用いてヒト脳由来転写産物を解析したところ、4,395箇所の新規部位を同定することに成功した。さらに、新規に同定されたイノシン化部位について機能解析を行ったところ、イントロン領域に生じたイノシンは、スプライシングの過程において異常なエキソンが取り込まれるのを防止する役割を持っていることが判明した。以上の成果は、Nature Chemical Biology誌のarticleとして、9月12日付のオンライン版として公開された。
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Nature Chemical Biology
巻: (印刷中(掲載確定))
J.Biol.Chem.
Annals of Neurology
Molecular Cell
巻: 39 ページ: 292-299