研究課題
基盤研究(B)
本年度は高速で高結晶性シリコン膜を作製するアプローチとして、高パワー密度化したマイクロ熱プラズマジェット(μ-TPJ)照射によるシリコン膜の相変化過程について調べ、アモルファスシリコン(a-Si)膜上に形成した溶融領域を高速走査することによる大粒径シリコン結晶成長の実現に注力した。ノズル径(φ)を従来の4mmから0.8mmへ縮小し、更に陽極-陰極間距離(アークギャップ)を従来の1.0mmから2.0mmへ拡大した。この結果、従来~8kW/cm^2であったピークパワー密度を最大53kW/cm^2まで高めることができた。高パワー密度化したμ-TPJを用いて石英基板上に堆積したa-Si膜の結晶化を試みた。その場観測技術から、μ-TPJ照射によってa-Siはまず固相結晶化(SPC)し、その後、溶融・再結晶化の過程で横方向への長距離結晶成長が誘起される事が明らかになった。μ-TPJ照射によりa-Si膜中に発生した溶融ゾーンを高速操作(~4000mm/s)する事で横方向温度勾配を生成し、長さ~60μmに達する結晶成長が可能となった。高速横成長結晶化(HSLC)技術で得られた(111)優先配向大粒径結晶をチャネルに用いてTFTを作製した。SPCおよびHSLC条件において、それぞれ電界効果移動度μFE~10及び350cm^2V^<-1>s^<-1>の値が得られた。結晶粒径が20nm程度のSPCに対して、大幅な粒径増加を達成できるHSLCでは、4000mm/sという高い走査速度でも極めて高い移動度が得られ、本研究提案の結晶化手法が大面積に適用可能な結晶成長技術として高い可能性を有する事が実証された。
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