研究課題
基盤研究(B)
我々は、EBウイルス(EBV)陽性胃がん、上咽頭がんにおいてEBVがコードする小RNA分子EBERが宿主蛋白であるループス抗原Laとの複合体として細胞外へ放出され、そのEBERが自然免疫系のウイルス二本鎖RNA検知蛋白toll-like receptor 3(TLR3)を活性化し、その結果誘導されたインスリン様増殖因子IGF-1が、がん細胞のオートクライン増殖因子として作用していることを明らかにした。今年度の研究で、市販の4種類のLa抗体がEBV陽性胃がん細胞の増殖を抑制するが、EBV陰性胃がん細胞の増殖へは影響を及ぼさないことを明らかにした。また、LaはEBV陽性細胞の培養上清中には存在するが、EBV陰性細胞の上清中には存在しないこと、すなわち、LaはEBERとの複合体を形成して初めて細胞外へ放出されることを明らかにした。血液中の抗La抗体はLaとの複合体として存在する可能性があるため、抗La抗体のスクリーニング法としてLa固相化ELISAの代わりにサンドイッチELISA法を確立した。しかし、SLA血清110検体中、抗La抗体陽性は1例のみであった。そこで、免疫沈降法による抗La抗体の検出を行った。SLE患者血清では6例全てに抗La抗体が存在することが確認された。しかし、血清をRNAse処理すると反応がみられなくなったことから、SLE血清中の抗La抗体はLaと反応するのではなく、LaとEBERの複合体を認識していると推測された。以上、SLE患者血清中に抗La抗体が存在することが確認され、SLE患者末梢血リンパ球からの抗体作製が可能なことが確認された。
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