研究課題
基盤研究(B)
大腸癌については次の点を明らかにした。1)Frizzled-7のリガンド候補であるWnt11のmRNA発現を定量PCRで調べた結果、非癌部に比較して癌部では病期に関係なく発現の増加を認めた術後無再発例に比べて、再発あるいは死亡例では有意に高値であった。また、Wnt11とFrizzled-7mRNAの発現レベルは有意に相関していた。さらに、Wnt11遺伝子導入細胞ではmock細胞に比べて増殖能およびin vitro浸潤能が増加した。2)ホルマリン固定パラフィン包埋切片を使用したKRAS変異検査の基礎的検討を行い、アンプリコンサイズが278bp以下であればほぼ100%検査可能であり、保存期間や脱パラフィン条件は無視し得るととが明らかになった。3)治癒切除木能な進行・再発大腸癌を対象とした2つの第二相試験を通じて(n=251)、codon 12,13以外のKRAS変異、BRAF変異、PIK3CA変異のいずれもがcetuximabの治療効果予測因子となることを示した。腎細胞癌については次の点を明らかにした。1)Wnt antagonistの1つであるDKK3の発現が癌部で低下しており、DKK3遺伝子導入細胞は対象細胞に比べて増殖能が低下し、アポトーシスが亢進した。この際、G0/G1アレストとP21の発現増加を伴い、non-canonical JNK経路を介することが示された。さらに、遺伝子導入細胞は、in vivo腫瘍形成能が低下した。2)DKK4遺伝子導入細胞では、核内beta-catenin、cychn D1、c-Mycの発現低下を認めたが、in vitro浸潤能・運動能およびin vivo増殖能は亢進していた。シグナル経路としてnon-canonical JNK経路の関与が示された。
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