研究概要 |
本研究の目的は,わが国において,歯周炎が冠動脈疾患のリスク因子となるか否かを明らかにすること,および歯周炎が冠動脈疾患に及ぼす影響を活性酸素種の観点から検討することである。 前年度に続き,歯周組織の状態と冠動脈疾患との関連をみるための横断研究を行った。日本大学練馬光が丘病院循環器科の42~89歳(平均69.4歳,標準偏差11.0歳)の患者70名(男性47名,女性23名)を対象に,問診,心血管疾患および口腔内の診査,血液生化学検査,血清の酸化ストレス度・抗酸化力の測定を行った。急性心筋梗塞19名,陳旧性心筋梗塞12名,狭心症11名,不安定狭心症6名,再発性虚血性心疾患5名であり,これらのいずれかの診断を受けた52名を虚血性心疾患群,その他の18名を非虚血性心疾患群とし,2群の比較を行った。 その結果,虚血性心疾患群は非虚血性心疾患群よりも6mm以上の歯周ポケットを有する歯数が有意に多く,最高血圧が有意に高く,血中TNF-αレベルおよびHDLコレステロールレベルが有意に低かった(Mann-WhitneyのU検定,p<0.05)。一方,性,年齢,喫煙歴,飲酒歴,運動習慣,教育歴,歯間部清掃用具(フロス等)の使用の有無,歯磨き頻度,現在歯数,動揺歯数,平均歯周ポケット深さ,4mm以上の歯周ポケットを有する歯数,平均アタッチメントロス,4mm以上および6mm以上のアタッチメントロスを有する歯数,プロービング時の出血割合,根尖病巣保有歯数,歯垢指数,歯周ポケットからの排膿歯数,血清の酸化ストレス度・抗酸化力では2群間に有意差はみられなかった。 これらの結果から,虚血性心疾患は重度の歯周炎と関連することが示唆された。一方,両者への関与が予想された活性酸素種については明らかな関連がみられなかった。 なお,縦断研究については,約1年後の再検査を4名に対して行った。
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