研究課題
基盤研究(B)
近年のヒトならびに水産家畜現場における抗菌剤使用の濫用は薬剤耐性菌の生態環境中における蔓延と薬剤耐性病原菌による感染症の増加をもたらした。これは感染症治療に対して選択可能な薬剤を大幅に制限することとなりこれへの対応は喫緊の課題となっている。特に近年世界で急激な増加傾向を示している基質特異性拡張型β-lactamase(extended-spectrumβ-lactamase,ESBL)の健常人における罹患率ならびに罹患に関与する危険因子に関しては不明な点が多くその解明が急がれている。そこで、本研究では、住民の転出入が少ないタイ農村部地区を対象として、健常住民のESBL産生腸内細菌罹患率ならびに当該耐性菌の菌型や耐性遺伝子型を解析し、加えて、耐性菌の罹患に関与する危険因子の検討を行った。その結果、対象とした、タイ北部のナン地区、中部のカンチャナブリ地区、南部のナコンシタマラート地区で、いずれもCTX-M型のESBL産生腸内細菌の住民罹患率が、それぞれ29.3%,50.6%,29.9%と極めて高かった。また、その耐性遺伝子型(わ姦cTx-M)が1型、III型、IV型でそれぞれ7.4%,0.2%,28.5%を示した。これらESBL産生腸内細菌の大部分は大腸菌であった。罹患に関与する因子解析では、年齢、性別、教育歴、食習慣、抗生物質使用について直接の因果関係は認められなかった。しかし、対象とした3つの地域間において最も高い罹患率を示した地域住民が、3つの地域の中で処方箋無しの抗生物質購入とその使用率が最も高く、両者の関連性が示唆された。これらの結果から、タイにおける健常人住民の当該耐性菌罹患に地域間で若干の相異が有るが、総じて高い比率(39.5%)で罹患していることが明らかとなった。加えて、この高い耐性菌罹患率に住民の抗生物質使用の濫用が要因となっている可能性が示唆された。
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巻: 67 ページ: 1769-1774
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