研究概要 |
Fibroblast Growth Factor(FGF)は細胞増殖因子の一種であるが、放射線障害の予防・治療に有効であると考えられている。本課題では、作用機序が不明なFGF12について、細胞外からの投与により放射線障害を軽減できることを、培養細胞とマウスを用いて証明するとともに、そのFGF12の作用機序を解明することを目的にした。前年度までに、細胞外FGF12が放射線誘導性アポトーシスを抑制できることを示し、その機序としてFGF12が細胞内移行できることも明らかにした。さらに、30アミノ酸からなるFITCラベルしたペプチドを用いて、膜透過ペプチドドメイン部位を探索したところ、C末端部のアミノ酸配列140-169と、中央部の30-59,40-69,70-99,80-109のペプチドがよく細胞内移行した。本年度は、FGF12Bのdeletion mutantを作成し、膜透過ペプチドドメインの同定を試みた。その結果、中央部80-109付近とC末端140-149の2か所に膜透過ペプチドドメインを発見しCPP-M、CPP-Cと名付けた。CPP-MはFGFファミリーに共通するドメインだったが、CPP-CはFGF12が属するFGF11サブファミリーに特異なものだった。そこで、FGF1のC末端にこのCPP-Cを結合させた融合蛋白質を作成してみると、この融合蛋白はFGF1よりも効率よく細胞内移行した。以上、細胞外FGF12の細胞内移行を担うCPP-MとCPP-Cを同定するとともに、CPP-Cが他のタンパク質を細胞内へ移行させられること示し、細胞外FGF12のアポトーシスに対する作用機序の解明に近づけた。
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