自分たちの歌を自らつくり,つくり替え,相手に伝える,という営みは,広く民謡やわらべうたにみられ,古くから日本におけるうたの文化を生み出してきた。既存の楽曲を教えることを中心とした授業や,国際社会に生きる日本人としての自覚を求める,といった外的な根拠に基づいた日本音楽の指導ではなく,子どもたちの内側に自文化を形成し,子ども一人ひとりの成長と日本の音楽文化との接点を求めることが必要である。教材ではなく学習材としての発想の転換,民謡やわらべうたの本質を捉えた学習過程の開発,それらに基づくカリキュラム構築の重要性を,歴史的な研究,民俗音楽の研究,実践的な研究を通して明らかにした。
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