研究概要 |
生け水への糖添加が,切花の花色を改善することは広く認められている。本課題では,糖付加による花色変化,花色素の構成・量的変化およびアントシアニン生合成関連遺伝子の発現の変化を明らかにし,実用的糖付加方法の開発を試みた.カーネーションでは,貯蔵中の処理糖濃度が高いほど早く開花し,花径も大きくなった. 5%スクロース 3 週間の貯蔵で,切り花中の糖濃度が上昇しエチレン生産のピークが 2-3 日遅れた. 5%スクロースで 4-8 週間貯蔵した切り花は,いずれも 3 週間程度の品質保持を示した. 低温貯蔵中に主要な2つのアントシアニンは,スクロース処理区でより多く蓄積した.カーネーション花弁から糖誘導型と想定される転写因子遺伝子 DcAN2 を得たが,外生のスクロースに反応しなかった.CHS,CHI,DFR,ANS の発現量がスクロース液貯蔵中に増加し,生けた後でも CHS,DFR,ANS および DcAN2 の発現量はスクロース処理区でより多くなった.グロリオサ切り花の第1,2花では,生け水中の糖の有無による花色の差は認められなかったが,それより上位の花では,スクロースを含む生け水に生けた花は, L 値が低く C 値が高くなった.また中位の花で花色発現が不良となる現象が認められた.水で生けた切り花では第1 花に比べて上位の小花でアントシアニン含量が急激に減少したが,生け水にスクロースがあると,第4及び第5 花で第1 花と同等までアントシアニン含量が回復した.水の場合は第1花の糖含量が最も高く上位の花ほど低くなった.一方生け水にスクロースがあると,上位の花ほど糖含量が増加する傾向を示した.以上より花弁における糖の不足が発色不良の原因とは言えなかった. 第3から 5 花の GsDFR と GsANS の発現はいずれも高く,第3花を中心とする発現不良はより下流のアントシアニン生合成関連遺伝子の発現が関与していると推察された.
|