研究概要 |
進行大腸癌に対する抗がん治療は近年,目覚ましい進歩を遂げているが,未だ生存期間中央値は25-30ヶ月であり十分とは言い難い.その原因として,大腸癌が肝・腹膜・肺などへの遠隔転移を来しやすい形質を持っている事が挙げられる.最近同定されたMACC1 (metastasis-associated in colon cancer-1)は,大腸癌の転移形質を規定するMET遺伝子の転写因子である。そこで,本研究では,申請者らが独自に開発したsiRNAをリポゾームに封入する技術を用いて(Nat Biotech 2008),更にリポゾームに大腸癌指向性を持たせた上でMACC1のsiRNAを封入し,MACC1を抑制する事で大腸癌の転移性を喪失させ抗がん治療の効果を高めることを計画した.本年度は,大腸癌指向性を持たせたリポゾームの開発をおこなった.in vitroならびにin vivoでの大腸癌特異的送達性を蛍光色素を封入した大腸癌細胞指向性リポゾームに内包化し投与実験を行ったところ,両条件下において,大腸がん細胞株への特異的な集積効果を認めた 更に,MACC1に対するsiRNAを作製し,種々の大腸癌細胞におけるMACC1発現抑制効果を検証し,特異性ならびに効果的なノックダウン効果を持つsiRNAを抽出し,浸潤能などの抑制効果を検証している。さらに,今後はこのsiRNAを封入したリポゾームを作製し,in vivoでの転移抑制効果を検討する予定である
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