研究概要 |
COPDでは酸化ストレス関連遺伝子、小胞体ストレス関連遺伝子の変化が指摘され、さらにタンパク質の様々な翻訳後修飾も報告されている。我々はアスパラギン酸の異性体化に着目した。アスパラギン酸の異性体にはD-Asp, D-isoAsp, L -isoAspが存在する。同意のもとに採取した肺組織の抽出液を作成し、D-Asp特異的タンパク分解酵素とプロテオミクスを組み合わせ、D-体化したアスパラギン酸を含むタンパク質の網羅的解析を行った。感受性タンパク質ではGSTpi, Peroxiredoxin-II, Prohibitin, Serum amyloid p component, また非感受性タンパク質ではapolipoprotein AIを同定した。コントロール群(非COPD群)では感受性タンパクは7%程度であったが、COPD 群では30~40%の異性体化を示した。PCMT 1の肺組織での発現はコントロール群とCOPD群で有意差はなかった。酸化ストレスの誘引物質としてタバコの抽出液を用い、肺胞上皮由来細胞(A549)における、修復酵素PCMT1、小胞体ストレス(GRP78)、感受性タンパク質の発現およびD-アスパラギン酸への変化についても検討した。A549細胞にタバコ抽出液2%暴露でsuperoxide dismutase 1(SOD1), PCMT1 、GRP78 の時間依存的有意な増加を認めた。また、prohibitin, GSTpiにおいて時間依存性に有意なD-体化アスパラギン酸の増加を認め、抗酸化作用に関連する分子(GSTpi)およびミトコンドリア機能関連分子(prohibitin)の翻訳後修飾による機能障害が示唆された。ヒト肺組織ではPCMT1の発現の変化がないことから、D-Asp 特異的タンパク分解酵素では検出できないPCMT1 の基質とならないD-isoAspの増加が考えられた。
|