研究概要 |
多発性骨髄腫(MM)の病型診断,予後推定,治療薬開発に寄与する遺伝子異常を同定することを目的として今回の研究を行った.蛍光 in situ 分子雑種(FISH)法,多色蛍光染色体解析(SKY)法,高密度 SNP アレイ解析,PCR を用いて MM 症例と MM 細胞株を解析した.MM における PVT1 再構成の頻度は,臨床例で 7/54 例(13.0%) ,細胞株で5/11 株(45.5%) であった. MM 細胞株から新規のキメラ遺伝子として, PVT1 exon 1-NBEAexon 3 と PVT1 exon 1 -WWOX exon 9 を同定し,これらの異常 NBEA と異常 WWOX はN 末端を欠いていると考えられた. MM における 8q24 染色体異常では従来から MYC 遺伝子の関与が議論されていたが,今回の研究から,PVT1 が高頻度に再構成し,PVT1 との融合により相手遺伝子の発現が変化することによって, MM の進展に関与することが示唆された.一方,18q21.1-q21.3 領域の解析から,DCC のエクソン 2 とイントロン 1 の 5'側の一部が融合し,エクソン 1 のみを欠く異常 mRNA を検出した.免疫沈降法による解析では,DCC 蛋白は検出できなかった.従って, 異常 DCC mRNA が正常 DCC の発現を抑制する long non-coding RNA として機能している可能性が考えられた.
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